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【震災・原発事故14年】古里への思い今も NYでギャラリー運営福島市出身の彫刻家末次庸子さん 架け橋になりたい

2025.02.25 10:49
「米国と福島の架け橋になりたい」と日々活動する末次さん。ギャラリーでは会津本郷焼や会津漆器など福島県の伝統的な品々を並べている=米ニューヨーク・ギャラリー「HACO」

 米ニューヨークでギャラリーを運営している彫刻家の末次庸子さん(福島市出身)は、東日本大震災、東京電力福島第1原発事故に見舞われた福島県の被災地の状況や魅力を伝える活動を続けている。27年前に渡米し、ギャラリー開設など夢をかなえる中でも古里への気持ちは変わっていない。風評払拭の力になりたいと、米国の芸術家を一定期間、福島市の温泉に招き創作に励んでもらう「温泉レジデンシー」の実現を目指している。「米国と福島との架け橋になりたい」と熱い思いを語る。


 1998(平成10)年に米国に移り住み、ニューヨーク市立大や美術学校「アート・スチューデンツ・リーグ」で学んだ。卒業後は展覧会などで作品を設置する学芸員のような「アートテクニシャン」などとして働いた。言葉の違いや美術業界への疑問など苦悩や葛藤を抱えながらも、「ニューヨークでアーティストになりたい」との夢を追い続け、2017年にギャラリー「HACO」をオープンした。

 震災、原発事故発生後、古里が「負のイメージ」で米国内に伝わっていると感じ、心を痛めていた。直接の被災経験はないが「何か手伝えることはないか」と考えた。ギャラリーで会津本郷焼や会津漆器など福島県が誇る工芸品を取り扱ったところ、現地の人に好評だった。

 震災で家族を亡くした男性の姿を捉えたドキュメンタリー映画の上映会を開いた他、復興に力を注ぐ横山俊顕住職(福島市・安洞院)を招き、座禅会や読経を企画した。原発事故に伴い窯元が避難を余儀なくされた大堀相馬焼を展示した。「事実を正しく伝えられて良かった。自分にもできることがあった」と当時を振り返る。

 震災から間もなく14年。いまだ残る風評をなくすため米国と福島をつなぐ新たな事業を思い描いている。芸術家が創作のため福島県に滞在する「レジデンシー」として、地元福島市などの魅力ある自然、温泉、人に触れ、福島県の良さを知ってもらう。美術を勉強する若者や住民らと共にアートを手がけるプロジェクトを視野に入れ、地域のにぎわいにもつなげたい考えだ。福島県の芸術家を米国に招くなど、互いに行き来できる形が理想という。「アートで福島が元気になってほしい」と力を込める。

 ギャラリーを始め、10月で8年となる。「今ある、自分がやるべきことを続けてレジデンシーにたどり着くことが目標。この場所を通して、さまざまな人とつながりたい」。古里を思う情熱は海を渡る。