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候補地決定2035年めど 除染土福島県外最終処分で工程表 2030年ごろから調査 政府、今秋に有識者会議設置

2025.08.27 10:42

 政府は26日、東京電力福島第1原発事故に伴う除染で出た土壌の福島県外最終処分の実現に向け、2035(令和17)年をめどに最終処分場の候補地を決定するとの新たな目安を示した。その前提として、秋ごろに新たな有識者会議を環境省内に設置するとした上で、最終処分場の立地条件などの技術的な検討を進め、2030年ごろの候補地の選定・調査の開始を目指すとした。


 同日、首相官邸で県外最終処分に向けた全閣僚会議を開き、これらを盛り込んだ今後約5年間に取り組むロードマップ(工程表)を取りまとめた。工程表のイメージは【図】の通り。2030年ごろの候補地の選定・調査の開始に加え、再生利用のめどを立てる。2035年ごろ、最終処分場の仕様を具体的にし、候補地を決定する。

 県外最終処分に向けては、除染土壌の減容技術の効率化や低コスト化の検討に向けた技術開発、減容技術の組み合わせ、地域とのコミュニケーションや地域共生の在り方などの検討を深め、候補地選定のプロセスを具体化させる。

 除染土壌の最終処分量を大幅に減らすため、再生利用を推進する。環境省が策定した基準(放射性物質濃度1キロ当たり8千ベクレル以下)を満たした除染土壌の公共工事での活用にめどを付けることについて2030年ごろを目標とした。

 再生利用に関する国民の理解醸成の一環で、7月に除染土壌を首相官邸の前庭の造成で使用したのに加え、9月からは東京・霞が関の中央省庁の花壇など9カ所でも計79立方メートルを活用する。その後、地方の出先機関などに対象を広げ、公共工事での土地醸成や盛り土、埋め立てなどへの活用、民間工事での事例創出も目指す。

 全閣僚会議の議長を務める林芳正官房長官は「政府一丸となって着実に取り組みを前進させていく」と述べ、工程表に掲げた取り組みを5年間で着実かつ積極的に実行するよう各閣僚に指示した。

 中間貯蔵施設(大熊町、双葉町)はこれまでに除染土壌など約1410万立方メートルを受け入れた。搬入開始から30年となる2045年3月までの県外最終処分が法律で決まっているが、候補地選定は進んでいない。


■達成できる裏付けなし 解説

 政府は除染土壌の県外最終処分場の候補地決定の目安を2035年ごろと示したが、明確な根拠に裏付けされたものではなく、達成できる担保はない。絵に描いた餅にしないためには、最終処分場の選定をはじめ最終的な処分量を減らすための再生利用の実施など、さまざまな場面で求められる国民の理解を得られるかが課題となる。

 政府が取りまとめた今後約5年間のロードマップ(工程表)について、環境省の担当者は「2030年ごろまでの目標は100%達成する気持ちで書き込んだ」と説明する。一方、2035年ごろとした最終処分場の候補地決定については「工程表が達成できれば、次の5年後にはそこまで進めるだろうとの見立てで目標とまでは言えない」とトーンを落とした。

 2030年ごろに除染土壌の公共工事での再生利用にめどを付けるなどとした目標についても、達成は見通せない。政府は東京・霞が関の中央省庁の花壇で除染土壌を再生利用し、安全性に関する理解を広める計画を立てたが、今後、地方にある出先機関に再生利用を拡大するには地元自治体や住民らとの調整が避けられない。

 環境省はかつて首都圏3カ所で計画した再生利用の実証事業が周辺住民の反対で頓挫した苦い経験があり、同じ轍[てつ]を踏むことなく住民の理解を得られるかは不透明だ。本格的な再生利用で、公共工事などの土地造成や盛り土などに使おうとすれば、住民理解のハードルはさらに上がる。最終処分場の受け入れに向けた地域との意思疎通も一筋縄ではいかないことが予想される。工程表通りに進められるか、政府の本気度が試されている。(東京支社報道部編集主任・佐藤庄太)