X メニュー
福島のニュース
国内外のニュース
スポーツ
特集連載
あぶくま抄・論説
気象・防災
エンタメ

【鶴ケ城の美景 未来へ】◇下◇ 冬季誘客に試行錯誤 広域連携で魅力向上 福島県会津若松市

2025.09.14 10:49
施設や自治体の垣根を越えた連携を促進し、観光客増加につなげたいと意気込む斎藤さん

 9月に入っても暑さが残る福島県会津若松市の鶴ケ城公園。公園を管理する会津若松観光ビューローの観光アドバイザー斎藤朱莉さん(30)は、早くも冬季の誘客策に頭をひねらせる。県内で随一の観光客数を誇る鶴ケ城だが、1年を通じた観光需要の平準化が長年の課題となっているためだ。

 2024(令和6)年度の天守閣の入場者数は12月が2万2499人、1月が2万727人、2月が1万6437人と、最も多い8月の7万7214人と比べると5万人以上少ない。特に2月は市内で観測史上最多を記録した積雪の影響もあり、客足が遠のいた。一方、外国人観光客は過去最多の3万2970人となるなどアジア圏を中心に人気が高まっている。

 「雪を弱点から強みに変えよう」と、関係者は試行錯誤を繰り返す。観光ビューローは昨年度から国の地域活性化起業人制度を活用し、斎藤さんら星野リゾートグループの社員を観光アドバイザーに迎えた。業界大手のノウハウを生かし、観光を軸とした地域づくりを推進する。斎藤さんは「単独の観光施設や自治体では、できることに限りがある。垣根を越えた連携が必要だ」と話す。

 連携事業の一つに、会津若松市、磐梯町、北塩原村によるスキー観光を軸とするスノーリゾート形成がある。3年連続で観光庁の補助事業に採択された。シャトルバスの運行など交通手段の確保・充実を図り、広域的な長期滞在や消費拡大に結び付ける。

 来年2月には「会津雪まつりWeek」と題した大型イベントを展開する。本丸で催される会津絵ろうそくまつりなどの既存事業を軸に、多彩な催しを集中開催する。他地域の観光施設ではデジタル機器を活用した外国語の案内もあり、スマートシティを打ち出す市も検討の余地がある。斎藤さんは「外国人観光客などのターゲットに何が刺さるのかを見極め、誘客を促進したい」と意気込む。

 天守閣再建から60年が経過し、瓦やしっくい壁などで老朽化が進む。市は2023年度に史跡若松城跡内施設長寿命化計画を策定。劣化や損傷の程度を踏まえて改修費用を概算した結果、2024年度から50年間で約15億円が必要と見込んだ。

 より安定的な財源を確保するため市は今年度、天守閣の入場料引き上げの検討をスタートした。料金を値上げするとなれば、さらに魅力ある観光地への磨き上げが欠かせない。

 市民をはじめ、県内外の多くの観光客から愛される鶴ケ城。福島県の歴史と文化を物語る財産として、末永く後世に残していかなければならない。観光ビューローの福島一郎理事長(66)は、鶴ケ城は会津地方の観光の目印となる存在だと強調する。「城を核に広域周遊の体制を整え、観光振興や経済循環につなげていく」と未来を見据えた。