福島県会津坂下町に根付く発酵文化の魅力に触れる「発酵祭」は28日、町内の見明山で初めて開かれた。地元の発酵関連事業者らによるパネル討論が催され、日本酒、こうじ、みそ、しょうゆ、ヨーグルトなどが発展してきた歴史や現状を共有し、未来に受け継ぐ決意を新たにした。
パネル討論には、五ノ井酒店の五ノ井智彦社長、会津中央乳業の二瓶孝文専務、曙酒造の鈴木孝市社長、目黒麹店の目黒正博代表、古川庄平町長が臨んだ。料理家の桑折敦子さん(南相馬市出身)らを交え、日頃感じていることや事業の展望などを語った。
多彩な酒を取り扱ってきた五ノ井社長は、ここ数十年で地元酒の味わいや地元住民の好みが変わったとし「日本酒を飲んで酔うというよりは、たしなんで味わいを楽しむという文化が広がっている」との見方を示した。
二人の経営者は業界が置かれている厳しい現状を明かした。鈴木社長は「坂下は水が良く、酒の精度が高い。和食ブームに乗って(売れ行きも)好調に思われるが、実は減っている。なので危機感が強い」と吐露した。目黒代表は「利用客の大半は70代以上で、こうじ業界は衰退基調。そんな中でも頑張れば、光が見えてくるはずだ」と訴えた。
二瓶専務は「東日本大震災をきっかけにチーズ作りを始めた。製造過程で出るホエイ(乳清)の新たな使い道ができるなど裾野は広がっている」と成果を報告した。
桑折さんは「発酵食品を調味料の一つとして使えば、手軽に腸活できる」と説明。古川町長は「発酵食品を取り入れれば美人になるとアピールしていきたい」と意気込んだ。
発酵祭は町の主催。ヨーグルトの早飲み、みそ造り体験などの企画が繰り広げられた。
(会津版)