世界アルツハイマーデーの21日、福島市のデイサービス利用者が飲食店で接客する「ばぁばとじぃじのごはん処」が市内の大戸屋ごはん処福島北矢野目店で開かれた。認知症への理解を広めるイベントで、店は温かい言葉や笑顔でいっぱいになった。
朝倉和子さん(91)はいつも使うつえを持たず、両手で料理を乗せたお盆を持った。スタッフの助けを借りながらゆっくりと客の待つテーブルに向かい、笑顔で慎重に料理を提供する。その姿に客も「ありがとうございます」「疲れてませんか?」と声をかけた。朝倉さんは「楽しく接客できて幸せ」と目尻を下げる。
一般社団法人「注文をまちがえる料理店」(東京都)の呼びかけで同様のイベントが全国一斉開催された。福島市では一般社団法人CARNIVAL WORKS(郡山市)が発起人となり、店を運営する再生資源卸売業「こんの」(福島市)、市内のデイサービス・ツクイ福島笹谷、福島鎌田で実行委員会をつくった。
参加者はデイサービスを利用する80~90代の20人。お出迎えからオーダー取り、配膳、見送りまで1卓を1人で担当した。学生ボランティアや従業員ら約30人がサポートした。利用者の家族や地域住民ら約70人が来店し「母のはつらつとした姿が見られて良かった」「人には役割や居場所が大事。イベントを通して認知症への理解が進んでほしい」との声が上がった。
CARNIVAL WORKSの菊池咲良さん(福島大3年)は「利用者と同じ時間を過ごし、温かい気持ちになった。何度も同じことを聞かれることもあったけれど、初めて聞いたような反応がかわいらしい」とほほ笑んだ。江藤大裕代表理事は「包容力のある空間だった。やったかいがあった」と手応えを語り、来年以降も継続する方針を示した。
県内ではこの他、いわき、須賀川の両市で同様のイベントが開かれた。
(県北版)