東京電力福島第一原発事故で帰還困難区域となっている福島県葛尾村野行地区のうち、来年春の避難指示解除を目指す特定復興再生拠点区域(復興拠点)で30日、帰還に向けた住民の準備宿泊が始まった。初日は申請した夫婦1組が10年8カ月ぶりに自宅で一晩を過ごした。6町村に設定されている復興拠点で夜間滞在が可能になるのは初めて。
村によると、野行地区の復興拠点には30世帯83人が住民登録している。傷みが進んだ自宅を解体した人が多く、村は宿泊施設を設けた。
東京都の内藤光子さん(63)は夫の一男さん(64)と30日の午前中に自宅を訪れ、片付けをしたり、アルバムに目を通したりした。
内藤さん夫妻は光子さんの古里である葛尾村への移住を計画し、2010(平成22)年秋に家を建て、2011年9月に本格的に移住する予定だった。しかし、東京電力福島第一原発事故が発生し、移住は中断を余儀なくされた。
光子さんの両親が切り開いた土地を守りたいとの思いが帰還の意思を強くした。家が壊れずに残ったことも決め手となった。
これまで都内からたびたび自宅を訪れて、片付けなどを続けてきたが、毎回2時間ほどしか滞在できなかった。光子さんは「ゆっくり花の栽培など好きなことができる」、一男さんは「ようやく葛尾で夕飯を食べられる」と話した。
復興拠点の準備宿泊は大熊町でも12月3日に始まる。