政府と福島県双葉町は9日、東京電力福島第一原発事故に伴う同町の帰還困難区域のうち、来年6月以降の避難指示解除を目指す特定復興再生拠点区域(復興拠点)での準備宿泊を来年1月20日に開始すると決めた。いまだ全町避難が続く双葉町で住民が自宅に寝泊まりできるのは初めてとなる。原発事故から11日で10年9カ月。同町の年明けの準備宿泊開始で、避難区域となった県内全ての市町村で住民生活の営み再開の動きが具体化する。
準備宿泊の対象地域はJR常磐線双葉駅を中心とした復興拠点約555ヘクタールと、2020(令和2)年3月に避難指示が先行解除された双葉駅東側や町北東部など約220ヘクタール。12月1日現在、実施地域に住民票があるのは1457世帯、3627人となっている。準備宿泊は実施地域での生活再建を目指す全町民が対象となる。町によると、既に家屋を解体した住民も多く、今年夏時点での準備宿泊の希望世帯は約30世帯だという。
町は一時宿泊施設として、町内のビジネスホテルの宿泊費を一部補助する。町民の自宅修繕などの手伝いなどに訪れる親戚や知人なども含まれる。希望する町民は来年1月4日から受け付けるコールセンターでの事前登録が必要になる。
町は、10月から11月にかけ県内外で開いた町政懇談会で町民に準備宿泊の概要を説明してきた。9日の町議会全員協議会で町議から開始の了承を得た後、伊沢史朗町長が政府原子力災害現地対策本部の辻本圭助副本部長と協議し、来年1月20日の開始を正式に決めた。今後、町民に準備宿泊のしおりなどを配り、希望者を募る。伊沢町長は「準備宿泊は避難指示解除に向け実際に町に住み、問題や不便さを検証する場。一つ一つ前向きに捉え、問題解決に取り組んでいく」と語った。
原発事故に伴い県内12市町村に避難指示が出された。その後、避難指示解除準備区域、居住制限区域、帰還困難区域に再編され順次、避難指示の解除が行われてきた。2020(令和2)年3月には双葉町の避難指示解除準備区域が解除され、原発事故に伴う避難区域は帰還困難区域のみとなっている。
帰還困難区域を抱える7市町村のうち南相馬市を除く6町村に設定された復興拠点については、葛尾村が11月30日、大熊町が12月3日から準備宿泊を開始した。富岡町が来年春、浪江町は来年秋の開始を目指して調整を進めている。飯舘村の復興拠点では、準備宿泊の具体的な動きは出ていない。