■片野仁人さん カタノ社長、白河市
白河市の小売業「カタノ」社長の片野仁人さん(41)は、耕作放棄地で栽培されたソバとパスタを組み合わせた「そばパスタ」の開発・販売を通じ、農業分野での持続可能な開発目標(SDGs)の普及促進に取り組んでいる。「自分にできる範囲で行動し、共感の輪を広げたい」。爽やかな笑顔の奥に強い決意をにじませる。
白河市出身。白河高卒、立教大大学院修士課程修了。大手食品メーカー勤務を経て二〇一五(平成二十七)年に家業を継いだ。
東日本大震災で崩れた市内の国史跡・小峰城跡の石垣修復工事が二〇一九年に完了した。市のシンボル復旧を新たな時代に向けた節目ととらえ、地域活性化への思いを強くした。翌年、白河青年会議所(JC)の理事長に就いた。地域のリーダーとして「子どもたちにより良い未来をつなごう」と持続可能なまちづくりを決意。「これまでありそうでなかったグルメ」として、そばパスタを完成させた。
■耕作放棄地 課題を捉え
同商品は地域おこし団体「野出島地域活性化プロジェクト」(白河市)が耕作放棄地で栽培したソバをカタノが買い取り、原料に使用している。味や独自性、将来性が評価され、一月に県の六次化商品ブランド「ふくしま満天堂」審査会で最高賞のグランプリを受けた。
現在は販路開拓に力を注ぐ。県内や栃木県の商業施設で販売し、白河発の新グルメとして定着を目指す。プロジェクトの収益が増えれば、継続的な環境保全の一助になる。
片野さんは「商品が開発された背景を知ってもらうことが大切」と強調する。耕作放棄地の増加や後継者不足など農業を取り巻く課題は山積する。そばパスタが、身近な問題に目を向けてもらうきっかけになる。「どうすれば効果的に発信できるか、模索していきたい」と前を向いた。