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郷土の宝守り伝える 史跡公園で地域活性化 震災後、文化財保全に尽力【あすを見つめて】

2022.03.09 09:50
文化財の魅力を伝承したいと語る藤木さん

 南相馬市教委文化財課の主任文化財主事の藤木海さん(48)=同市原町区=は、東日本大震災と東京電力福島第一原発事故の被害を受けた文化財の保存と伝承に力を注ぐ。「文化財は過去の出来事を知る唯一の手段。将来に伝え残したい」と意欲をにじませる。

 東京都出身。国士舘大文学部卒、立正大大学院文学研究科修了。考古学の知見を生かせる職に就きたいと、二〇〇〇(平成十二)年八月に旧原町市教委文化財課の臨時職員となった。市内は当時、現在の国史跡「泉官衙(かんが)遺跡」の発掘調査で盛り上がっていた。二〇一七年三月に国士舘大で人文科学の博士号を取得した。

 震災と原発事故後は市建築住宅課所属となり、仮設住宅の利用受け付けや手配など災害対応に奔走した。「大悲山(だいひさ)の石仏」の一つとして知られる市内小高区の観音堂石仏の覆屋(おおいや)が倒壊した。新しい建物の設計と周辺の発掘調査を進めた。専門家らと議論し、将来に残すための方法を探った。地元住民でつくる保存会が石仏の管理や境内の清掃を担ってきた。「地元の方々との関わりを大切にしながら復旧作業を進めることを心掛けた」と振り返る。覆屋は二〇一六年度に完成した。

 小高区は震災と原発事故で人口減少や高齢化が加速した。地域コミュニティーの力も弱まったが、「文化財は地域を活性化させる力になる」と信じる。その一方、震災と原発事故の影響で中断していた浦尻貝塚の史跡公園化事業が再開するなど、文化財関連の明るい話題もある。「古い時代ほど明らかになっていないことが多い。史跡公園を通して歴史や文化を未来に伝える。世代を超えて文化財を保存していきたい」と意気込んでいる。