プラスチック資源循環促進法(プラ新法)で自治体が努めなければならないと明記されたプラスチック製品(プラ製品)の分別回収で、福島民報社は福島県内59市町村にアンケートを実施し、6割を超える36市町村が実施時期は未定と答えた。既に分別回収をしている市町村を含め35市町村が新たな財政負担を課題と捉えており、プラごみによる環境汚染などが世界的な問題となる中、分別回収の広がりには国による支援強化が不可欠な実態が浮き彫りとなった。
プラ製品はバケツなどプラスチックでできた製品で、お菓子の袋など商品を包むための「プラスチック製容器包装(プラ容器)」とは異なる。プラ製品は多くの市町村で、可燃ごみや不燃ごみに分別されてきた。プラ新法はプラスチックの資源循環を進め、海洋汚染の一因とされるプラごみ削減、ごみ燃焼による二酸化炭素排出抑制などの地球温暖化対策を推進するため昨年4月に施行され、プラ製品の分別回収が努力義務となった。県内ではリサイクル率が全国下位に低迷している。
実施しているのは5市町村で、「実施時期未定」が36市町村で最多だった。回収方法は実施済み、実施予定を問わず、半数以上の31市町村がごみ収集車による行政回収と回答した。課題を複数回答で尋ねた結果は「新たな財政負担が生じる」が35市町村だった。
プラ容器の分別回収費用は市町村が全額負担するが、リサイクル経費は環境省などの告示に基づき、プラ容器の販売・提供などを担う「特定事業者」が99%を負担し、市町村分は1%。プラ製品に同様の仕組みはなく、分別回収からリサイクルまでの全費用を市町村が賄う必要がある。国は経費の一部を特別交付税で措置しているが、県内からはさらなる支援を求める声が上がる。
郡山市はプラ製品の分別回収を実施した場合の処理費用を2~3億円と試算。年間約30億円のごみ処理費用がさらにかさむため、国の手厚い支援を求めている。市の担当者は「処理を担う事業者の参入を促すため、事業者側への財政支援なども充実させてほしい」と訴える。
福島市も年間約40億円の費用を要しており、新たな負担を懸念。市の担当者は「現状の支援では不十分」と話す。新地町の担当者も分別回収からリサイクルまで全額の財政負担が重荷になるとみている。
廃棄物問題に詳しい福島大経済経営学類の沼田大輔教授(環境経済学)は「自治体による全額負担の仕組みは回収するほど負担が増える。規模の大きな自治体ほど分別回収に二の足を踏んでいるのではないか」と分析。「国は交付税措置に加え、さらなる財政支援へ再考が必要だ」と指摘している。
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■プラ製品の分別回収の状況■
▼実施している(5市町村)
いわき、二本松、本宮、大玉、猪苗代
▼2024年度中に実施予定(11市町村)
会津若松、会津坂下、湯川、金山、会津美里、石川、玉川、平田、浅川、古殿、三春
▼2025年度中に実施予定(2町村)
鏡石、天栄
▼2029年度までに実施予定(5市町村)
白河、西郷、泉崎、中島、矢吹
▼実施時期未定(36市町村)
福島、郡山、須賀川、喜多方、相馬、田村、南相馬、伊達、桑折、国見、川俣、下郷、檜枝岐、只見、南会津、北塩原、西会津、磐梯、柳津、三島、昭和、棚倉、矢祭、塙、鮫川、小野、広野、楢葉、富岡、川内、大熊、双葉、浪江、葛尾、新地、飯舘
※会津若松は開始当初、回収品目を絞って実施予定。
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■プラ製品の分別回収の課題■
(複数回答。右数字は市町村数)
▼新たな財政負担が生じる 35
▼住民への周知に時間がかかる 35
▼新たな人材確保の負担が生じる 26
▼回収しても近くに処理業者がいない 16
▼その他 16