「エール」効果加速、6割超が県外から 古関記念館、今月入館1万人超え

2020/10/29 10:55

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連日、多くの人が訪れている古関裕而記念館。平日でも入場制限となる日が増えている
連日、多くの人が訪れている古関裕而記念館。平日でも入場制限となる日が増えている

 福島市出身の作曲家古関裕而さんと妻金子(きんこ)さんをモデルにしたNHK連続テレビ小説「エール」の放送終了まで一カ月を切る中、ゆかりの地に波及効果が広がっている。市内の古関裕而記念館の入館者数は物語の終盤の盛り上がりとともに右肩上がりで増え、今月は一カ月当たりで初めて一万人を突破した。売り上げを伸ばす菓子店や飲食店もあり、関係者は、ドラマ終了後も東北の観光名所として定着させると意気込んでいる。

 二十八日、記念館では午前九時の開館から約四十分後に「入場制限」がかかった。新型コロナウイルス感染予防で展示室に一度に入れる人数を約二十人に限っているためで、六月から週末に制限する時間が増えていたが、十月以降は平日でも珍しくない。制限がかかると、整理券を配って隣接する音楽堂などで待機してもらう。週末には待ち時間が一時間を超える日もある。

 今年十月は二十七日時点で一万四百九十五人に達した。月一万人超えは一九八八(昭和六十三)年の開館以来初の快挙だ。ドラマが最終盤のクライマックスに向かうにつれて増加。戦後復興に向かう国民を勇気づけた「長崎の鐘」が誕生する名シーンが登場して最初の日曜日となった二十五日には一日当たりで過去最多の六百三十人が来場した。

 記念館によると、入館者の六~七割は県外で、宮城、山形、栃木、茨城、新潟の各県など近県が目立つという。首都圏や関西などからのツアー客の姿も見られる。

 二十八日に仙台市から日帰りで訪れた会社員工藤徳夫さん(67)は「毎日、欠かさずドラマを見ているうち、古関さんの足跡をたどってみたくなった。次はゆかりが深い川俣町まで足を伸ばしたい」と再訪を誓っていた。

 館長の村上敏通さん(61)は「既に十二月の団体予約も入っている。ドラマが終了しても古関さんの人気は続く。功績を伝え、幅広い方々に来館してもらって福島を盛り上げていきたい」と語った。

■小売店にも波及 ドラマ終了後の維持課題

 エール効果は福島市内の小売店などにも現れている。古関さん作曲の「福島夜曲(せれなあで)」にちなんだ同名の焼き菓子を十五年ほど前から販売している福々和本舗は、十月の売り上げが前年同期の一・二倍となった。菓子「福島夜曲」は卸先が拡大し、注文数は前年の三倍だ。

 エールにちなんだ飲食メニューの人気も高まる。「味処 大番」は古関さんの好物の紅葉漬、金子さんの出身地・愛知県豊橋市の名産品ちくわなどを使った「エール御膳」が好評。記念館近くにある店舗では月に三百食ほども注文がある。

 古関さんが銀行員時代を過ごし、ドラマの舞台になった川俣町では、ゆかりのスポットを巡るスタンプラリーが観光客らに人気。チェックポイントの道の駅かわまた内のおりもの展示館は四~九月の入館者数が六千五百人で、新型コロナによる約一カ月の休館を挟みながら、昨年同期の三千人から倍増した。

 一方、ドラマ終了後の効果維持が課題だ。福島市中心部に開設された古関裕而まちなか青春館が十一月末で終了するなど期間限定企画も多い。市は「ロケ地巡りなどのファンの受け入れ体制をしっかりつくる。古関さんを生かしたまちづくりに一層、磨きをかける」(観光コンベンション推進室)としている。