
福島市出身の作曲家古関裕而さんと妻金子(きんこ)さんがモデルのNHK連続テレビ小説「エール」は二十六日、ドラマ部分が完結した。窪田正孝さん演じる主人公・古山裕一と、二階堂ふみさん演じる音の物語は福島県に温かな感動をもたらし、県民は「ドラマを通じて福島や古関メロディーの魅力が全国に届いた」と感謝した。関係者は、放送終了後も「エール」効果を持続させ、地域づくりにつなげると誓った。
二十六日の放送では若かりし姿になった裕一と音が人生を振り返り幕を閉じた。三月に亡くなった志村けんさんが演じた作曲家小山田耕三からの手紙を回想する場面も描かれた。最後は窪田さんと二階堂さんが役を離れて登場。新型コロナウイルスの影響が続く中、窪田さんが「早く日常が戻ることを願って、皆さん一緒に頑張りましょう」と国民に文字通りエールを届けた。
ドラマ部分の完結を受け、市内にある古関さんのゆかりの地には多くの人が訪れた。古関裕而記念館に来た郡山市の石田典和さん(68)は「大団円でうれしい半面、終わってしまって寂しい」と語った。記念館にはドラマ放送開始前に足を運んでおり、今回が二度目。「朝に放送を見て、思わず来た。最後のメッセージに勇気をもらえた」と話した。
福島市が管理するJR福島駅西口駅前広場の大型マルチビジョンでは午前八時と午後零時四十五分からドラマ部分の最終話が放映された。道行く市民らが足を止め、見入っていた。
福島市の木幡浩市長は「放送を通じて多くの人が励まされた。福島への注目も集まった」と感謝した。市によると、古関裕而記念館の十一月の来館者数は一万五千人を超える見込みで、一カ月当たりの来館者数は過去最多となった十月の一万二千五百八十人を大きく上回る。
市は今後、ドラマで使用した小道具などをNHKから引き取って市内で展示することや、毎年開いている古関裕而音楽祭に出演者に参加してもらう計画を進めている。音楽文化発信のため、市内のふくしん夢の音楽堂(市音楽堂)で活動する常設オーケストラ創設に向けても動いており、来年度中の活動開始を目指す。
福島商工会議所青年部は二〇一四(平成二十六)年度から、古関さんの功績を発信する事業を展開してきた。連続テレビ小説の実現に向け署名活動も行った。渡辺啓道会長(45)は「二人のエピソードやドラマで描ききれなかった部分を伝える活動を展開したい」と今後の抱負を語る。
ドラマを契機に、金子さんの出身地である愛知県豊橋市の豊橋商工会議所青年部との連携事業も活発化した。同青年部の稲田典之会長(48)は「深まった縁を大切に、お互いに交流を続けていきたい」と決意を新たにした。