拠点外除染「無理か」 音沙汰なし、まるで無視【復興を問う 帰還困難の地】(44)

2021/01/07 09:27

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避難した会津で9度目の冬を迎えた泉さん。庭木の雪囲いにも慣れてきた
避難した会津で9度目の冬を迎えた泉さん。庭木の雪囲いにも慣れてきた

 雪と闘う日々がまた巡ってきた。東京電力福島第一原発事故で帰還困難区域となった大熊町南部の熊地区から会津若松市神指町に避難している主婦泉順子さん(67)は、会津で九度目の冬を迎えた。避難の翌年に求めた中古住宅の庭木の雪囲いをする手つきは慣れたものだ。庭からのどかな田園風景を望む。「まるで大熊の家にいるみたい」

 大熊で生まれ、嫁ぎ、小学校教諭として働きながら子ども二人を育てた。心から自然豊かな古里で過ごした思い出が離れることはない。「家の除染はしてほしいが、国から何の音沙汰もない。無視されているかのようだ」。全ての帰還困難区域の復興・再生を掲げたはずの国に対し、不信感が募る。

 泉さんの自宅は町が二〇二二(令和四)年春の避難指示解除を目指す特定復興再生拠点区域(復興拠点)や汚染土壌を置く中間貯蔵施設用地に含まれていない。除染計画が定まっていない通称「白地(しろじ)地区」にある。ただ、政府は昨年十二月、復興拠点外について人が居住しない場合に限り、除染をしていなくても年間の積算線量が二〇ミリシーベルト以下になれば地元の意向に応じ避難指示を解除できる仕組みを決定した。泉さんの自宅周辺が該当する可能性がある。

 町内はJR常磐線大野駅周辺や県立大野病院を合わせた約四・二ヘクタールなど復興拠点の一部で避難指示が先行解除され、立ち入り規制が拠点内の一部地区で緩和された。除染が進む復興拠点全域の面積は約八百六十ヘクタールだが、残る帰還困難区域は約四千ヘクタールある。未除染の範囲は広大で、毎時五マイクロシーベルトを超える高線量の場所も点在する。政府は新たな仕組みで、表土の剥ぎ取りなどの面的除染を避難指示解除の要件としないことも示した。除染せずに線量がまんべんなく下がるのか、泉さんは疑問を抱く。「病院や買い物の利便性を考えると、もう大熊には帰れない。でも、大切な古里である大熊をきれいな状態に戻してほしい」

 原発事故から二年ほどの間は自宅の様子を見に行ったが、最近は足を運んでいない。きっと荒れ果てているんだろうと想像する。

 長女のため両親が贈ってくれた七段のひな飾り、小学校高学年の時に買ってもらったピアノ、嫁入り道具のきりのたんす…。思いの詰まった宝物が持ち出せないまま残っている。「除染には多くの費用がかかる。拠点の外は、無理なんだろうな」

 古里の未来はどうなってしまうのか-。降り積もる雪のように、憂いが心を覆っていく。