
時計やパソコンといった工業製品に漆を塗る技術を開発し、さまざまなメーカー、分野の「もの」に高級感を演出している。伝統の技を現代に生かし、新境地を開拓した。国内はもとより海外からも大きな注目を集めている。
一九〇〇(明治三十三)年、漆精製業者として創業した。太平洋戦争後、漆器製造に進出したが、手掛けたのは「裾物」と呼ばれる安価な製品ばかりだった。本格的なものづくり企業への脱却を模索する中、坂本朝夫社長(70)は自転車や金庫など、明治時代の工業製品に漆が塗料代わりに使われていた歴史を知る。さらに、欧州の企業から、伝統技術が生まれた場所で生き残るすべについて「古いものを残す部門と新しいものに挑戦する部門を一対一にする」との教えを受け、新事業に乗り出した。
筆記具高級ブランド・パーカーのペンを手始めに、カメラ、スピーカー、航空機のファーストクラスのシート、自動車の内装など手掛けた製品は多岐にわたる。また、漆塗りのアクセサリーや蒔絵(まきえ)のバッグも手掛ける。ファッション業界に対応するため開発を続けており、その技術は工業製品にも生かされている。
坂本社長は「今はいいものを長く使う時代。日本人の感性を生かし、工業製品に付加価値をつけていきたい」と意欲を語る。
■メモ
▽設立=1900(明治33)年
▽社長=坂本朝夫
▽従業員数=25人
▽住所=会津若松市大町1の4の51
▽電話番号=0242(25)4111