理解醸成が国の責務 県外最終処分実現の鍵【復興を問う 帰還困難の地】(61)

2021/02/21 09:08

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妻のタキ子さんと一緒に、自宅の写真を見つめる鴫原さん(右)
妻のタキ子さんと一緒に、自宅の写真を見つめる鴫原さん(右)

 東京電力福島第一原発事故で帰還困難区域となっている飯舘村長泥行政区から川俣町に避難している鴫原誠一さん(77)は、住宅のリビングで妻タキ子さん(72)とともに一枚の写真を見つめた。

 「あのころの生活が懐かしいな」。自宅を空撮した写真から、当時の暮らしが浮かんでくる。思い出の詰まった家があった場所は、更地となっている。

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 鴫原さんの自宅は長泥行政区の特定復興再生拠点区域(復興拠点)内にあったが、国費で解体された。国は復興拠点の避難指示解除を目指す二〇二三(令和五)年までに、拠点内に除染土壌を再生利用して農地約三十四ヘクタールを造成する方針だ。

 放射性セシウム濃度が一キロ当たり五〇〇〇ベクレル以下の除染土壌を用いる。汚染されていない土を使い、約五十センチの厚さで覆うとしている。現在、農地造成の前段階として実証ヤードと呼ばれる農地約七アールが整備されている。除染土壌を使った農作物栽培の実証試験が進められ、鴫原さんら住民九人が作業に協力している。

 鴫原さんは月に二度、実証ヤードに足を運び、花や野菜を育てている。今の時期は、ストックやトルコギキョウがハウス内で咲き誇る。原発事故発生前に自宅で育てていた品種だ。過去の幸せな日々を思い返しながら、丁寧に手入れする。

 国は農地の造成工事を二〇二一年度から本格化させる。今年度中に除染土壌から再生利用する土を分別する設備が完成し、村内の仮置き場で保管されている除染土壌が運び込まれる予定だ。

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 原発事故に伴う除染で大量に発生した土壌や草木は大熊、双葉両町に整備された中間貯蔵施設に搬入されている。輸送対象となっている廃棄物の総量は約千四百万立方メートルに上る。

 除染廃棄物は中間貯蔵施設への搬入開始から三十年以内の県外最終処分が法で定められている。実現に向けて、国は除染廃棄物の多くを占める土壌の再生利用を推進する。長泥行政区の実証試験で安全性をPRし、道路の盛り土など公共工事で使う計画を掲げている。だが、長泥行政区以外では具体的な取り組みは進んでいない。環境省は二〇二一年度、除染廃棄物の再生利用の必要性や安全性への理解を促進する活動を全国で展開する方針だ。

 鴫原さんは「原発事故で汚された土を使うことが、広く理解されるには時間がかかるだろう」と感じている。県内だけでなく、県外においても再生利用が進まなければ膨大な除染土壌を減らすのは困難で、県外最終処分の見通しは立ちにくくなる。「国は長泥での取り組みを生かして再生利用の安全性を全国に発信し、理解を醸成すべきだ」と求めた。(第6部「中間貯蔵施設」は終わります)