
東京五輪の聖火リレーは三十一日、群馬県の二日目が実施され、渋川市の伊香保温泉を出発した。「一年中にぎわうように」との願いを込めた三百六十五段の石段脇に、店や旅館が並ぶ「石段街」をスタート。新型コロナウイルスの感染拡大で苦境の温泉街は、聖火の訪れをきっかけに、活気が戻ることを願った。
渋川伊香保温泉観光協会によると、今年二月の宿泊者数は前年同月比約28%に落ちた。石段街で駄菓子屋を営む今井三夫さん(78)は「いよいよ五輪が近づいてきた。少しずつにぎわいが戻ればうれしい」と話す。
東京パラリンピック代表に内定している陸上の唐沢剣也選手(26)は石段下で聖火を受け取り、伴走者と息を合わせて走った。「お宿玉樹」のおかみ関口明子さん(74)は「いっときでも日常を忘れる瞬間は大切」と笑顔だった。
唐沢選手は終了後「延期には本当に落ち込んだときもあったが、支えてくれる仲間と一緒に乗り切ってこられた。今日の聖火リレーで、止まった時計の針が動きだしたと感じる」と語った。
聖火は草津町の草津温泉でも、観光名所「湯畑」周辺を巡った。湯畑の前で長年続く土産物店の従業員本多恵美さん(45)は「最近はわくわくすることがあまりなかったので、気持ちが高ぶった」と喜んだ。
沼田市では福島県南相馬市から家族で移った中学生木幡悠紀さん(14)が、聖火をつないだ。