【官製風評 処理水海洋放出】漁業関係者 政府へ不信感あらわ 「情報発信を強化すべき」

2021/04/15 09:38

  • Facebookで共有
  • Twitterで共有
メヒカリの加工作業を見つめる上野台さん(左)。漁業へのマイナスの影響を危惧する
メヒカリの加工作業を見つめる上野台さん(左)。漁業へのマイナスの影響を危惧する

 東京電力福島第一原発の処理水を海洋放出する政府方針の正式決定から一夜明けた十四日、いわき市小名浜の鮮魚仲買・水産加工業「上野台豊商店」社長の上野台優さん(45)は「海洋放出はマイナスの影響しかない」と政府への不信感をあらわにした。原発事故から十年。風評にさらされた地元魚介類の消費拡大を目指す取り組みを地道に続けてきた。政府の一方的な決定にため息をついた。

 工場内では、社員がいわきを代表する魚メヒカリを手際よくさばく。上野台さんは作業を見つめ「いわきのメヒカリは脂が乗っていて、日本一おいしいと思う」と自信に満ちた表情で語る。

 同社は一九六〇(昭和三十五)年の創業。地元に揚がったサンマを使った郷土料理「ポーポー焼き」や福島県沖で水揚げされる魚介類「常磐もの」を使った加工品を製造販売してきた。鮮度と味の良さで県外からの引き合いも多かった。

 東日本大震災と原発事故で状況は一変した。都内で催された販促イベントで福島の魚が購入後、ごみ箱に捨てられていたという話を聞き、胸が痛んだ。

 県内外のイベントなどで福島の魚の安全性とおいしさを発信し続けている。魚食推進や風評払拭(ふっしょく)のために二〇二〇(令和二)年からは地元鮮魚店などと連携し「みみみプロジェクト」を展開している。常磐ものの青魚のすり身を使った食育プログラムで、子どもたちが魚を食べる機会を設けている。

 福島県漁業は三月で試験操業を終了し、四月から本格操業までの移行期間に入った。今後水揚げ量や流通量を増やしていこうと動きだしていた。漁師の苦労をすぐそばで見てきただけに、政府の決定には到底納得できない。

 政府は処理水を海洋放出する際、処理水から取り除けない放射性物質トリチウムの濃度を原子炉等規制法で定める環境放出基準値(一リットル当たり六万ベクレル)の四十分の一未満(一リットル当たり一五〇〇ベクレル未満)になるまで海水で薄める方法を示した。「政府の情報が消費者に伝わっていない。国内外への情報発信を強化すべきだ」と求めた。


■取引価格、震災前に回復

 県産の魚介類は東日本大震災、東京電力福島第一原発事故以降、徐々に水揚げ量が増え、市場での取引価格は震災前の水準に回復しつつある。

 農林水産省の二〇二〇(令和二)年度福島県産農産物等流通実態調査によると、主力魚種のヒラメの二〇二〇年度の一キロ当たりの平均単価(東京都中央卸売市場)は千百六十四円で、二〇一〇年度の千二百九十八円と同程度になっている。ただ、全国平均を下回っているのが実情だ。