

全国をつないだ東京五輪の聖火リレーは23日、東京都庁(新宿区)の都民広場で到着式を行った。3月25日に福島県をスタートし、12歳から109歳の約1万500人が参加。新型コロナウイルス感染拡大の影響でこの日も公道走行を中止したものの、121日かけて47都道府県を巡った。到着式最後の参加者には歌舞伎俳優中村勘九郎さん(39)が登場した。
到着式は、ランナーが走る代わりにトーチで炎を受け渡す「トーチキス」方式を採用。一般の人は入れず、参加者の家族や関係者が見守った。日本オリンピック委員会(JOC)の山下泰裕会長(64)らが聖火を一人ずつつなぎ、笑顔で手を振った。主催者は感染防止対策として声を出さない応援を呼び掛けており、家族らが拍手を送った。
中村さんは2019年のNHK大河ドラマ「いだてん」の主人公の一人で、日本人として五輪に初めて出場したマラソン選手金栗四三を演じた。この日は聖火を掲げながら金栗選手をまねて会場を走った後、聖火皿に点火した。
小池百合子都知事は「感染対策を徹底し、世界中のアスリートが素晴らしい競技を繰り広げる大会にしていきたい」とあいさつした。
都庁の外には五輪反対を訴える約100人が集まり、「五輪より命」などの横断幕を掲げたり、中止を求めて声を上げたりした。聖火はランタンに移され、国立競技場に移動。開会式で本県など被災3県の子どもたちに聖火が引き継がれた。聖火台に点火され、17日間熱戦を照らす。
◆「復興の象徴」会津産ヒマワリが会場彩る
到着式の会場となった都民広場には約1100本の福島県会津産のヒマワリが飾られ、聖火到着を祝う場に彩りを添えた。
切り花約1000本と鉢苗約100個がステージと聖火ランナーの走行路を装飾した。小池百合子都知事はあいさつで、東日本大震災と東京電力福島第一原発事故からの「復興の象徴」としてヒマワリを紹介した。
ヒマワリは会津坂下、会津美里両町の生産者が育て、都が提供を依頼した。五輪が閉幕する8月8日まで、都庁第一本庁舎に展示される。
◆「多くの人に勇気を」福島県民、無事点火に安堵
3月25日に福島県をスタートした聖火リレーの火が国立競技場にともり、リレーに携わった福島県民は安堵(あんど)の表情を浮かべ、大会の無事開催を願った。
聖火ランナーを務めた南相馬市の石神中二年の早坂優一さん(14)は小学2年の時、同級生とともにトーチのモチーフとなった桜の絵を描いた。「日本中のランナーが手にしたトーチの制作に携わることができ、改めてうれしい」と喜びをかみしめた。新型コロナウイルス感染再拡大など暗い話題が絶えない中、「聖火が多くの人に勇気を与える存在になってほしい」と願った。
聖火リレーで県内最終走者を務めた矢吹町職員の千葉麻美さん(35)は「聖火が無事到着し、ほっとした」と語った。2008(平成20)年の北京五輪は400メートル、1600メートルリレーに出場した。2016年の引退後は陸上教室や講演会を通じて子どもたちに五輪の魅力を伝えている。「(オリンピアンとしては)選手の試合を生で見てほしかったが、現状では仕方ない。子どもたちに五輪を知ってもらう良い機会。テレビで観戦し、興味を持ってほしい」と期待を寄せた。
南会津町での聖火リレーの際には、国指定重要無形民俗文化財の会津田島祇園祭の屋台が並び、ランナーを鼓舞した。西屋台の準備に携わった西町区長の渡部吉郎さん(73)は「開会式を迎えることができとても感慨深い。大会が無事に終わり、世の中が良い方向に回ってほしい」と望んだ。