第四十九回衆院選が公示され、十二日間の選挙戦に入った。県内の小選挙区は五選挙区全てで与党候補と野党統一候補の一騎打ちとなった。各候補は所属政党以外からも支援を受ける。さらに解散から投票日まで戦後史上最短という異例の展開だ。選挙後の政権の姿をじっくりと見据え、小選挙区と比例代表に票を投じたい。
小選挙区が一対一の対決となるのは一九九六(平成八)年に現行制度が導入されてから初めてだ。自民党は全ての選挙区に候補者を擁立した。岸田文雄総裁の誕生直後に公明党と連立政権の合意文書を交わしている。野党は1~4区に立憲民主党、5区に共産党が候補者を立てた。立民、共産と社民党、れいわ新選組は中央で共通政策に署名しているほか、3区を除く県内四選挙区では立民、社民の県連と共産の県委員会が市民団体を介して政策合意した。
各党が連携する中で、有権者がそれぞれの主張を短期間で理解するのは容易ではない。新型コロナウイルス感染症対策をはじめ、経済財政、社会保障・子育て、外交、エネルギーと政策課題は山積している。各党が出した公約には共通する部分も多いが、異なる部分もある。各候補は単に支持を呼び掛けるだけでなく、選挙戦を通じ政見と公約を丁寧に訴えてほしい。
県民からすれば、東日本大震災と東京電力福島第一原発事故からの復興への取り組みは大きな判断材料となる。先の臨時国会の議論では、今後の具体的な対応策にまでは踏み込まないまま解散を迎えた。各候補は、原発の廃炉や帰還困難区域の避難指示解除など、発生から十年を経ても横たわる課題に対してどう向き合うのか、具体的に示す必要がある。
本県小選挙区の投票率は前々回の二〇一四年が52・51%で過去最低、二〇一七年の前回も56・69%と過去二番目の低空飛行が続いている。共同通信社が十六、十七の両日に実施した全国電話世論調査では、今回の衆院選に「関心がある」と回答したのは69・6%だった。各候補には、有権者の関心をさらに高め、投票行動につながるような政策論議を望む。
さらに今回の衆院選は、新型コロナウイルスの感染が始まってから初めての全国規模の国政選挙となる。現在は落ち着きを見せているが、選挙による人の動きが感染拡大の呼び水となってはならない。感染リスクを減らしながらもしっかりと主張を伝える。新しい選挙スタイルへの挑戦も求められる。(安斎 康史)