論説

【J2ライセンス】理解広げ条件達成を(10月23日)

2021/10/23 09:02

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 サッカーJ3の福島ユナイテッド(福島U)は来季のJ2入りが絶たれた。昇格に必要なJ2クラブライセンスの取得を初めて申請したが、条件を満たせなかったためだ。条件達成には関係者の理解と協力、新たなサポーターの獲得が欠かせない。現状や将来像を、より分かりやすく県民に伝える必要がある。

 Jリーグはチーム力の維持や経営健全化、さらに子どもからお年寄りまで誰もが安全・安心に観戦できるよう、クラブライセンス制度を導入している。施設や組織運営など五つの基準の中に、財務状況、スタジアムの規模や設備、アカデミー世代の育成組織、天然芝の確保など合わせて五十七の審査項目が細かく定められている。

 先月、条件の不備が指摘されたのは十八歳以下の選手によるユースチームの活動だ。J1からJ3まで全五十七クラブの中で、ユースチームがないのは福島Uだけだという。福島Uは申請に当たりチーム登録を済ませたが、今季の活動実績がないことがネックになった。昇格までには、ホームとなる福島市のとうほう・みんなのスタジアム(あづま陸上競技場)に、シャワー室、ドーピングルーム、電源付き記者席、審判更衣室などの設備を設ける必要がある。さらに将来的には、一万人超が収容可能なスタジアムやクラブハウスの整備が求められる。

 ユースチームについては選手選考を終え、二十人ほどで来春始動する。各種設備も施設を所有する県に協力を求め、来シーズン当初までには整う予定だ。ただ、スタジアムやクラブハウスの新設となると、Jリーグの中でも財政規模が小さな福島Uにとっては容易なことではない。

 現在、新たなスタジアムの在り方について、福島市の経済界の有志らがビジョンを策定している。実現に向けては、こうした取り組みの情報を広く県民に発信し、官民問わず理解と協力を得ることが不可欠となる。当然のことながら、来場者が伸び悩む福島Uにとって、スタンドを埋め尽くすだけのサポーターの確保策も併せて示すことが求められるだろう。

 県や福島市の支援で、長らく懸案だったとうほう・みんなのスタジアムの芝生の全面張り替えや照明の新設を来季の開幕までに終える見通しになっている。当面は昇格を逃した悔しさを糧に、今季の残り全六試合の勝利にこだわってほしい。設立十年の節目を経て、次のステップとなるJ2昇格を狙う本気度を県民に示すべきだ。(小林 和仁)