三十一日投開票の衆院選は選挙権年齢が十八歳に引き下げられてから四回目の国政選挙となる。主な争点の新型コロナウイルス対策や経済対策、東日本大震災の復興施策は若い世代にとっても重要な問題だ。民法改正で二〇二二(令和四)年四月から成人年齢も十八歳に引き下げられる。十八、十九歳の有権者は大人の自覚を持ち、次代の担い手として一票を投じてほしい。
十八歳選挙権は二〇一六(平成二十八)年の参院選から導入されたが、県内十代の投票率は41・39%にとどまった。以降、二〇一七年の衆院選が39・26%、二〇一九年の参院選が31・06%と低下傾向にある。国政選挙の投票率は二十代も30%台と低迷している。
十代、二十代は進学や就職で地元を離れる人が多く、投票率低下の一因になっているとの指摘がある。公選法では、住民票を移して住民基本台帳に三カ月以上登録された人が居住地で投票できる。転居先での登録期間が三カ月未満でも、旧住所地で三カ月以上の登録があれば、転居後四カ月以内は旧住所地で投票できる。各選管委はこうした仕組みを若者に改めて分かりやすく周知してもらいたい。
また、低迷の要因として十八歳選挙権導入から五年が経過し、一時的に高まった若者の選挙への関心が薄れているとの見方もある。県選管委は動画投稿サイト「ユーチューブ」で期日前投票の手続きを紹介しているほか、フェイスブックなどを活用して若い世代への投票啓発に力を入れている。市町村の各選管委も投票呼び掛けを強めるべきだろう。大学や高校、商業施設への期日前投票所設置など、若者が投票しやすい環境づくりも引き続き進めてほしい。
ただ、選挙のたびに投票を呼び掛けるだけでは本質的な解決は難しい。県選管委は高校生に選挙の仕組みや投票方法を教える模擬選挙・出前講座に力を入れている。二〇二二年度からの高校の新学習指導要領では、主権者教育に力点を置く新科目「公共」が必修となる。各高校は国や地域社会の課題と政治が果たすべき役割について生徒が主体的に議論する場を設けるなど、より踏み込んだ主権者教育を実践すべきではないか。副読本や新聞を活用し、小・中学生から選挙や投票の仕組みを学ぶことも大事だろう。
政党や立候補者は、若者の声に向き合い、政見・公約を分かりやすく示す必要がある。若者はさまざまな媒体や機会を通じて各党、各候補の政見や公約を吟味した上で投票してほしい。一票を行使するのは大人の務めだ。(斎藤靖)