
3区は再選を狙う自民党の前職上杉謙太郎(46)と十選を目指す立憲民主党の前職玄葉光一郎(57)が激しい得票争いを繰り広げている。前々回、前回の衆院選に続き三度目の争いだが一騎打ちは初めて。上杉は後援会や支援団体をフル稼働させ票固めを急ぎ、自公政権継続の必要性を説く。玄葉は野党共闘を前面に出さずに政策の浸透に重きを置き、政治の刷新を訴える。
■上杉氏 若年層や無党派狙う
上杉は二十五日、玄葉の地元の田村地方で選挙カーを走らせた。岸田内閣で就いた外務政務官としての抱負や一期目の実績を強調し、「若い世代が古里で暮らし続けられるよう地方創生を前進させる」と支持を求めた。
二〇一七(平成二十九)年の前回は、上杉が住む白河市をはじめ東白川郡などで玄葉に迫った一方、須賀川、田村両市などでは水をあけられた。今回は大票田で玄葉の地盤である須賀川市に選挙事務所を構え、支持拡大を目指している。
さらに須賀川、白河両市に若手経営者らでつくる後援会を新たに設け、新たな支持層の開拓を図った。選対本部長の轡田倉治は「若い世代や女性への支持の広がりを肌で感じている。横綱に胸を借りるつもりで挑む」と言葉に力を込める。
今回の得票目標は、前回から約四万票増の十万票に設定した。3区内の十九市町村全てにある党支部、百を超える後援会の末端まで動かし、自民、公明両党所属の県議や市町村議が連携して入念に地盤固めを進めている。会員制交流サイト(SNS)での情報発信も強化し、若年層や無党派層への食い込みを狙っている。
ただ、当選九回で閣僚経験のある玄葉の支持基盤は個人票、組織票とも強固だといい、陣営幹部は「いわゆる『玄葉票』の切り崩しは容易ではないが成し遂げる」と意気込む。野党候補一本化に伴い、前回の共産票約一万一千票の七~八割が玄葉に流れる可能性があると陣営はみている。
■玄葉氏 地元に張り付き訴え
玄葉は二十五日、東白川郡を回り、政権交代の必要性を訴えた。現政権の新型コロナウイルス対策の不備や公文書改ざん問題などを突き、「与党と野党が拮抗(きっこう)した政治にしなければならない」と声を張った。
前回は約九万三千票を獲得して上杉らを退けた。だが、玄葉の得票率は前々回から3・4ポイント目減りした。上杉の勢いと票の伸びを止めるべく、玄葉は前回衆院選後から新たな取り組みとして地元企業の朝礼訪問を始め、政策を訴えてきた。
これまでの衆院選では県内外での応援演説に連日駆け回ったが、今回は二日間だけの予定だ。これほど地元に張り付くのは当選初期を除くと珍しいという。選対本部長代行の宗方保は「地元への思い入れや政治家としての姿勢を前面に打ち出し、誇れる票数を獲得する」と誓う。
玄葉陣営は得票目標を定めていないが野党候補一本化による票の上積みを念頭に、3・4ポイント増の得票率60%以上を目指している。五百超の後援会、県農業者政治連盟などの推薦団体と連携し街頭演説などを重ねている。
3区以外の野党統一候補は立民、共産、社民の県組織が合意した共通政策を掲げて選挙戦に入ったが、玄葉は県版の政策合意を避けた。陣営幹部は「政策面が相いれないのだろう」と推し量り、野党候補一本化による票の上積み効果は読みにくいとみる。高齢化した支持層の世代交代が順調に進んでいないとの懸念も陣営内にある。(文中敬称略)
■3区
上杉謙太郎 46 ☆自民 前(1) [公]
玄葉光一郎 57 ☆立民 前(9)
(届け出順、敬称略。丸数字は当選回数。☆は比例東北との重複立候補。四角枠は政党本部の推薦)
▽白河市、須賀川市、田村市、岩瀬郡、西白河郡(西郷村は含まない)、東白川郡、石川郡、田村郡
▽有権者=26万4629人(18日現在)
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2017年衆院選福島県3区の結果
当 92,930 玄葉光一郎 53 無所属
比 60,006 上杉謙太郎 42 自 民
11,196 橋本 健二 69 共 産
(敬称略。比は比例代表での当選者)