衆院選2024

【県内選挙区/最前線ルポ】4区 鍵握る「恒三票」の行方【2021ふくしま衆院選】

2021/10/27 15:46

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 4区は立憲民主党の前職小熊慎司(53)と自民党の前職菅家一郎(66)がともに四選を懸け、激しいつばぜり合いを繰り広げている。政界の重鎮で旧民主党最高顧問を務めた渡部恒三元衆院副議長が昨年八月に死去。元衆院副議長を支持した層を基盤とする小熊陣営、切り崩しを狙う菅家陣営による初の一騎打ちは、いわゆる「恒三票」の行方が鍵を握る可能性がある。互いの支持層が複雑に絡み合い、戦況は混沌(こんとん)としている。

■小熊氏 二大政党の意義継承 菅家氏 保守の自民回帰狙う

 小熊は二十三日、地元の喜多方市をはじめ、西会津町などの田園地帯に選挙カーを走らせた。米価下落に対する政府対応の不十分さを批判し、「農業者戸別所得補償を復活させ、会津地方の基幹産業である農業を守っていく」と訴えた。

 小熊は前回選挙で菅家に千二百九票差で敗れ、比例東北で復活当選した。今回は小選挙区での勝利にこだわっている。得票目標は前回に約二万三千票を上積みした九万票に設定した。元衆院副議長が掲げた「二大政党制による政権交代」の実現を訴え、共産、社民などの票を確実に取り込む戦略を描く。公示日の第一声には両党関係者らが顔をそろえた。

 元衆院副議長を支えてきた熱烈な支持者が小熊の連合後援会顧問に名を連ね、地元の著名な経済人など約二十人が後援会を切り盛りしている。会津若松市内の選挙事務所では、スタッフらが支援者リストを手に電話攻勢をかけ、票固めを急いでいる。菅家陣営による「恒三票」切り崩しの情報が寄せられたためだ。陣営幹部は「『恒三票』をしっかりと受け継いでいくためには、小選挙区での勝利が欠かせない」と危機感を強める。

 前回は菅家の地元である大票田の会津若松市で千七百九十三票差をつけられ、小選挙区で苦杯をなめた。選対本部長の宮下雅志は「厳しい選挙になる。前回獲得した票を守り、上積みを目指す」と述べ、会津若松市内での支持拡大を重点に据えている。

■小熊氏 二大政党の意義継承 菅家氏 保守の自民回帰狙う

 菅家は二十三日、会津若松市や会津美里町などを回った。復興副大臣や環境政務官を歴任し、JR只見線の全線再開通や四〇一号国道博士トンネルの貫通などに道筋を付けたと実績を強調した。米価下落に不満を募らせる農業者には「コメで生計が成り立つように必ず何とかする。政府を動かす」と訴えた。

 菅家は前回選挙で小熊に競り勝ったが、今回は小熊に野党候補が一本化された。前回の共産票約九千五百票、社民票約八千票を単純に小熊に加えると、約一万六千票届かない。陣営は追う立場との認識を共有し、中盤戦で巻き返し、終盤での逆転を目指す。陣営幹部は「鍵は『恒三票』の切り崩しだ。自民に回帰する人もいるはずだ」とみる。

 陣営は得票目標を九万票に設定し、元衆院副議長の支持者に協力を求めている。支持動向の流れをどれだけ変えられるかが鍵とみている。後援会長の庄條徳一は「恒三さんの支持者も根っこは同じ保守系。与党としての実績を訴える」と支持拡大の道筋を描く。建設関係や商工会、医師会などの支援団体の協力を得て、選挙事務所を置く会津若松市など都市部での浸透を目指す。連携する公明党のネットワークも最大限活用するという。

 前回、下郷、檜枝岐、南会津、磐梯、猪苗代、湯川、三島、西郷の八町村で小熊に水をあけられた。今回は町村部で後援会をフル稼働させ、街頭演説や小規模集会で政策の浸透を図っている。

   (文中敬称略)


■4区

小熊 慎司 53 ☆立民 前(3)

菅家 一郎 66 ☆自民 前(3) [公]

(届け出順、敬称略。丸数字は当選回数。☆は比例東北との重複立候補。四角枠は政党本部の推薦)

▽会津若松市、喜多方市、南会津郡、耶麻郡、河沼郡、大沼郡、西郷村

▽有権者=23万7712人(18日現在)

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2017年衆院選本県4区の結果

当 68,282 菅家 一郎 62 自民

比 67,073 小熊 慎司 49 希望

  9,492 古川 芳憲 66 共産

  8,063 渡辺 敏雄 68 社民

(敬称略。比は比例代表での当選者)