票は託された(11月1日)

2021/11/01 07:11

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 多方面に活躍する阿川佐和子さんは著書「聞く力」(文春新書)で「人に話を聞くことで、自分の心をときめかせたい。聞かれた側は語りながら、自分の頭を整理し思いもよらぬ発見をするかもしれない」と記す。対話することで互いの理解が深まり、新たな気付きが生まれる▼聞く力は、政治家に欠かせない能力だ。住民から求められていることは何かを正確に判断して政策に生かさなければならない。今回の衆院選で岸田文雄首相は、さまざまな「声」を書きとどめたとされるノートを披露し、アピールに余念がなかった▼解散から投開票まで十七日間という、戦後最短の日程で行われた選挙戦だったが、岸田首相に限らず各党、各候補は市井の人々の生の声を聞いたはずだ。新型コロナの感染者数は全国的に減っているが、二年近く続く生活への不安は解消されていない。経済回復も急務となっている▼有権者は未来を照らすような公約に耳を傾けて、自らの思いを一票に託した。選挙が終わったからといって、政治家の都合に託[かこ]つけて有権者をおろそかにしてもらっては困る。国民の生活を守るため、聞くだけでなく、しっかりと行動してもらう必要がある。