大分市で開かれた第七十四回全日本合唱コンクール全国大会で、郡山高と郡山一中がそれぞれ日本一に相当する文部科学大臣賞に輝いた。新型コロナウイルスの影響で開催は二年ぶり。コロナ禍の中、工夫を凝らして練習に励み、「合唱王国」に新たな歴史を刻んだ。生徒はもちろん、学校関係者、保護者各位に心から祝意をささげたい。
高校の部で郡山はBグループ(三十三人以上)に出場し、三大会連続で日本一を射止めた。同じグループで会津が二位相当に選ばれ、県勢が上位を独占した。Aグループ(三十二人以下)に出場した安積黎明も二位相当に入った。かつて十三年連続で日本一に輝いた伝統校の活躍はうれしい限りだ。
中学の部では郡山市の三校が同声の部で全国の舞台を踏んだ。郡山一は悲願の頂点に立った。郡山六は初めて金賞を受け、郡山七も銀賞と入賞を果たした。各校とも東北大会の反省点を生かし本番に臨み、結果を残した。
新型コロナウイルスの流行で、練習はコロナ前のようにはいかず制約は多かった。郡山高は通常、マスクを着けながらの練習にしたため、言葉や発音を明瞭にする点に腐心したという。部員同士がマスクをとった状態の時に、相手の口元をよく見て、互いに唇の動かし方をアドバイスした。昨年三年生で出場できなかった卒業生は、後輩に細やかなエールを送り、部員の心をひとつにした。
郡山一中はマスク着用で肺活量が落ちる傾向にあるため、原点でもある呼吸法の体得をあらためて心掛けた。パートごとに区切った練習にもより時間を割いたそうだ。
合唱に限らず、文化部の活動はこの二年間、困難と向き合いながらの日々だったはずだ。好きな活動にひたむきに取り組んだ生徒の情熱に敬意を表したい。つらかった稽古と仲間たちとの友情はかけがえのない思い出、体験になるだろう。
合唱文化を一層振興させるため、「全国合唱祭」の復活を提案する。全国コンクールで上位入賞したグループを郡山市に招き、同じく上位入賞した市内の合唱部と共に歌声を響かせてきたが、二〇一七(平成二十九)年春を最後に開かれていない。
地元の生徒たちによる日本一のハーモニーを県民が直接聴ける貴重な公演だった。愛好者にとっては違う年齢層の発表を学べる有意義な機会でもあった。優秀校を抱え楽都を標榜[ひょうぼう]する郡山市と県が連携して、開催の可能性を探ってほしい。(荒木 英幸)