論説

【災害廃棄物処理】広域連携強化し迅速に(11月18日)

2021/11/18 08:56

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 災害時に出る廃棄物の処理が本県をはじめ全国的な課題となっている。廃棄物の放置は腐敗や悪臭など衛生面の悪化を招き、住民の生活再建や社会基盤復旧の足かせとなる。県と県内五十九市町村、十三行政組合は今年度、広域処理を円滑に進めるための相互応援協定を締結した。県と市町村は協定の効果的な運用に努め、迅速な処理につなげるべきだ。

 災害廃棄物は二〇一九(令和元)年の台風19号と記録的大雨の際、県内三十七市町村で計約三十五万二千トン(推計)発生した。年内に処理を終える見通しだが、二年以上もかかっている。二月の最大震度6強の地震では、県内二十七市町村で約十七万四千トン(推計)発生した。このうち、八月末までに処理されたのは6・3%にとどまっている。地震で壊れた家電や家具の処理が進む一方、損壊家屋の解体処理に時間がかかっている。

 協定では、災害発生時に市町村単独での処理が困難な場合、応援要請を受けた県が処理可能な市町村を探し、受け入れ先を調整する。処理の経費は原則として応援を要請した市町村が負担する。大規模災害で広域的に施設が被災し、県内での処理が追い付かないような事態も想定される。県内にとどまらず、県外の自治体との連携もさらに強化すべきだろう。

 迅速な処理とともに課題となるのがコスト削減だ。さまざまな種類が交じる大量の廃棄物を分別するには時間と経費がかかる。東日本大震災の際、宮城県東松島市は仮置き場に廃棄物を持ち込む段階から住民や業者に細かく分別を呼び掛けた結果、コンクリート破片や金属類などの再利用が進み、コスト削減につながったという。県内の市町村はこうした事例を参考にしてほしい。

 専門人材の確保も重要となる。環境省は経験豊富な都道府県や市町村職員を人材バンクに登録し、被災自治体に派遣している。廃棄物の収集や仮置き場の運営、損壊家屋の解体などについて助言しており、積極的に活用してもらいたい。市町村は職員間で災害の経験と教訓を共有し、万が一に備える必要がある。

 国は地方自治体に対し、廃棄物の量や仮置き場候補地などを事前にまとめた災害廃棄物処理計画の策定を求めているが、県内では進んでいない。県によると、策定を終えたのは県と十一市町村だけだ。計画は早期復旧を進める上で重要な役割を果たす。災害のたびに処理にまごつくようでは困る。各市町村は計画策定を急ぐべきだ。(斎藤 靖)