【廃炉事業】東電は人材育成に力を(12月2日)

2021/12/02 09:20

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 東京電力が福島第一原発の廃炉事業に地元企業の参入を促すため、業務説明を始めて一年余りが経過した。構内工事など約八十件の契約に結び付いたが、経済団体から「参入を増やすためには、規模の小さな事業所の技術力向上が必要になる」との指摘が出ている。東電は専門性を備えた企業人の育成を積極的に後押しし、相双地方の産業力の底上げに力を尽くすべきだ。

 東電は「地元企業と連携して廃炉を進め、成果を他産業に広げる」として、昨年九月から商談会などを重ねてきた。成約に至った約八十件には福島第一原発構内の舗装や施設解体のほか、ディスプレーなど物品購入も含まれている。今後は一般工事や資材調達にとどまらず、特殊性の高い設備の設計・設置や放射線耐性など高い性能が求められる製品開発に発注の幅を広げ、廃炉事業の一翼を担う企業を育てる必要がある。

 その意味で試金石の一つとなるのが、東電が二〇二〇年代半ばを目標とする廃炉関連製品製造での業務発注だ。福島第一、福島第二両原発の使用済み燃料を収めるキャスク(保管容器)の生産から始める構想だが、キャスクは極めて高い密閉性と耐久性が要求されるため、技術力のある大手メーカーへの発注が予定されている。地元企業の役割は一部部材の作製、加工にとどまる見通しという。浜通りの商工会などからは「小規模な事業所にとって東電の仕事は技術的なハードルが高く、受注しにくい」との声が出ており、参入がどれだけ実現するかは、業務の難易度次第で不透明な状況と言えよう。

 東電は今年度内にも、廃炉事業に携わる予定の企業向けに研修会を開始する方針を固めた。現在、社内でカリキュラムの検討を進めているが、福島第一原発構内で働く上での心得、放射線業務従事者としての役割の指導などを想定しているもようだ。

 ただ、難度の高い工事や関連製品の生産現場で中核を担い、廃炉事業で得た高度な技術を他の産業分野にも応用できる人材を育てるためには、さらに踏み込んだ対応が求められる。外部講師を招いての技術指導も必要になるだろう。元請け企業が業務を受注する条件として、下請けからの研修生の受け入れや積極的な技術移転を設けてはどうか。政府が浜通りに整備する国際教育研究拠点と連携し、若者が廃炉全般を学ぶ機会も設けてもらいたい。

 高度な技術を有する人材の育成こそが、相双をはじめ浜通りの産業復興に資する第一歩となる。(菅野 龍太)