論説

【白河の空き家対策】地域再生の視点で(12月25日)

2021/12/25 09:22

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 白河市や県が空き家、空き店舗対策として特色ある取り組みに着手している。情報発信の在り方を改め、多角的な視点から不動産活用の手法を探っている。個々の物件に新たな命を吹き込み、地域全体の再生につなげられるかが注目される。

 白河市には旧市内を中心に約九百件の空き家、約九十件の空き店舗がある。「空家等対策の推進に関する特別措置法」に基づき、市は市空家等対策計画を策定し、適切な管理に向けた所有者の意識醸成や、利活用の促進を定めた。「空き家対策係」を庁内に設置し、空き家、空き店舗を登録するバンクをそれぞれ開設したほか、県の各種支援に加え、改修などに補助金を交付する制度も設けている。

 体制は整ったが、課題は少なくない。その一つが家屋放置の長期化だ。二〇一五(平成二十七)年度の市の調査では空き家バンク登録の希望者は4%にとどまっている。現在、登録者は増加傾向にあり、売買・賃貸件数は約四十件を数えたものの、まだ十分とは言えない。人の住まない家は年々劣化していく。家屋の処分が滞れば、危険で衛生上問題のある「特定空家」を生み出しかねない。

 空き家対策は特定空家の除去とともに、物件の活用が大きな柱とされ、活用の機会をどう増やすかが重要となる。その可能性を高める試みが先ごろ行われた。

 一つは県県南地方振興局が中心となって実施した県南地方の空家バンク登録物件の動画配信だ。定住・移住希望者からの問い合わせの増加に応えた。外観と室内をオンラインで公開し、物件情報の精度を上げた。細やかな情報を求める声に応え、物件と定住・移住希望者のマッチング促進を図った。全国の参加者からは好意的な反応が相次いだ。

 空き店舗を市街地再生の核として位置付け、周辺エリア全体の生活向上に結びつける「リノベーションまちづくり」に取り組む白河市では先日、中間成果報告とも言える公開プレゼンテーションが行われた。遊休資産を地域的・社会的資源としてとらえることで、新たな形の利活用に結びつけるのが狙いで、古い蔵をカフェに、元ゲームセンターを公民館補充施設として活用するアイデアが示された。

 空き家や空き店舗の状況はそれぞれ異なり、一律に解決策を導く公式はない。ただ、目指すところは地域コミュニティーの再生であり創出だろう。行政の支援内容に加え地域の本気度が試される。官民一体となった息の長い取り組みが必要だ。(広瀬昌和)