【官製風評 処理水海洋放出】東電へ不信感募る 原発不祥事相次ぐ中、規制委に審査申請 福島

2021/12/26 09:01

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福島第一原発では処理水の保管タンクが敷地を埋めている
福島第一原発では処理水の保管タンクが敷地を埋めている

 東京電力福島第一原発の処理水の海洋放出に向け、東電が原子力規制委員会に実施計画の審査を申請したことに対し、東電への不信感が高まっている。処理水への正しい理解が広がらないまま、東電は手続きを進める。故障した地震計の放置など不祥事を繰り返す東電に対し、風評被害を懸念する漁業者らは「信用できない」と憤る。専門家は、政府が指導責任を果たすべきと指摘する。

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 「政府方針により放出に向けた取り組みを進めなければならない。その上で、関係者の理解を得るため説明を尽くしたい」。23日、審査申請後初めて報道陣の取材に応じた東電福島第一廃炉推進カンパニーの小野明最高責任者は政府方針に沿う姿勢を示した。ただ、処理水に関する国民の理解醸成に向けた道筋は示さなかった。

 東電によると、福島第一原発の処理水のタンク保管量は16日現在、約128万6000トンで、容量約135万トンに達するまで、残り約8万4000トン。2023年春に満杯になるとしている。小名浜機船底曳網漁協所属の第三政丸船主志賀金三郎さん(74)は「(自分たちの)都合に合わせたような説明ばかりだ。こんな対応で『安心、安全』と語られても信用できない」と語気を強める。

 さらに、トラブルや不祥事が東電の信頼を損ねている。2月の福島県沖を震源とした最大震度6強の地震で、福島第一原発3号機で故障した地震計の放置が発覚した。腐食したコンテナからの放射性物質の漏えいなどもあった。柏崎刈羽原発(新潟県)ではテロ対策の不備が判明し、規制委が事実上の運転禁止命令を出した。

 東電は安全確保協定に基づき、福島県と福島第一原発が立地する大熊、双葉両町に対し海洋放出の実施計画の事前了解願いを提出。計画が規制委に認可され、事前了解を得られれば関連設備の工事に着手する方針だ。県は27日に県廃炉監視協議会を開き、計画内容の議論に着手する。

 原子力規制庁安全規制管理官付技術参与の経歴を持つ高坂潔県原子力対策監は「政府と東電が処理水に関する国民の疑問に向き合う基本的な姿勢が見えてこない」と指摘。その上で、合意形成に向けた透明性の確保を重要視し、「東電はありのままの情報を速やかに出し、信頼回復に努めるべきだ」と話した。