論説

【南相馬市長再選】課題解決に全力を(1月24日)

2022/01/24 09:15

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 南相馬市長選で現職の門馬和夫氏が再選を果たした。東日本大震災と東京電力福島第一原発事故から十一年近くが経過し、市は復興関連の各種施設整備をほぼ終え、地方創生に向けた新たな段階を迎えている。今後は避難区域だった小高区の再生や市立総合病院をはじめとした医療環境の充実などの課題解決に全力を挙げて取り組むよう望む。

 門馬氏は選挙戦で「継続で、さらに前進」をスローガンに掲げ、新型コロナウイルス感染防止対策や復興関連事業の推進、ロボットや小型無人機(ドローン)、医療関連の企業誘致など一期目の実績を強調し、市民から広く支持を得た。しかし、任期後半は二〇一九(令和元)年秋の台風19号による被害や長引く新型コロナの対応に追われ、手腕を十分に発揮できたとはいいがたい。

 ただ、明るい兆しも見えている。二〇二〇年に実施された国勢調査で、南相馬市は県内十三市で唯一、前回調査より人口が増加した。震災前に比べて減少しているとはいえ、喜ぶべきことだ。田舎暮らしを取り上げる雑誌の「住みたい田舎ベストランキング」では、同市が東北エリアの若者世代・単身者が住みたいまち、子育て世代が住みたいまちの両部門で三位、シニア世代が住みたいまち部門で四位に入った。いずれも県内ではトップで、市による南相馬の魅力のPRや手厚い支援策の効果が徐々に表れてきたとみられる。

 二期目は市民が家族や友人と安心して暮らせる百年のまちづくりを目指し、緩みない新型コロナ対策、医療・介護・福祉体制の充実・強化、結婚から子育てまでの総合的な支援、移住・定住環境の整備に力を入れるとしている。信頼される市政を確固たるものにするためには、公約に挙げた各種施策を着実に実行していくことが何よりも重要だ。

 原発事故に伴い、南相馬市は原発から二十キロ圏内、三十キロ圏内、三十キロ圏外に線引きされ、住民への賠償や医療などの支援措置に差が生じた。十年以上がたっても不公平感や住民間の溝は残念ながら解消されていない。それぞれの意見に耳を傾けながら、一体感の醸成と融和にも努めてもらいたい。

 今回の市長選も前回に続き接戦となった。対立候補に投じられた票の重みや批判の声も念頭に置き、二期目の市政運営に当たってほしい。震災と原発事故前より発展した地域をつくるために、従来の施策を進化・拡充させ、目に見える形で成果を上げることが求められる。(風間洋)