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【逆境を乗り越えて-只見センバツ初出場】(上)冬期間で下半身強化

2022/01/30 13:47

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センバツ出場決定から一夜明け、グラウンドに積もった雪の上を全力疾走する主将の吉津(右)ら=29日午前10時ごろ、只見町
センバツ出場決定から一夜明け、グラウンドに積もった雪の上を全力疾走する主将の吉津(右)ら=29日午前10時ごろ、只見町

 今春の第94回選抜高校野球大会(センバツ)に21世紀枠での初出場が決まった只見。豪雪地帯の只見町にあり、厳しい環境で工夫をしながら練習に励んできた。2011(平成23)年には町内が新潟・福島豪雨に見舞われ、現在の同校選手を含む多くの町民が被災した。人口減少の著しい過疎地で町独自の制度を活用し部員確保にも努めてきた。数々のハンディを乗り越えて悲願達成を果たした只見の軌跡を追った。


 センバツ出場決定から一夜明けた29日、只見高のグラウンドには午前9時30分から雪の上を長靴で全力疾走する只見ナインの姿があった。

 豪雪地帯のため例年、11月から4月までの間はグラウンドが使えない。雪上でのランニングについて同校野球部の鈴木宏睦部長(34)は「不安定な状況で走るので体幹の安定につながる」と効果を強調する。野球部の屋内練習場はなく、冬期間は体育館を他の部活動と場所を分け合いながら使用する。駐輪場でバッティング練習などに打ち込む。厳しい練習環境だが、投手の大竹優真(2年)は「幼い時から雪は身近にある。ハンディとは思っていない。雪かきで下半身を鍛えることもできる」と笑顔で語った。

 少子化が加速する過疎地にある学校として町と連携し部員数の確保にも努めている。現在の部員数は選手13人とマネージャー2人の計15人。このうち5人が町外出身者だ。5人とも町が運営する寮に食費のみで入ることができる町の「山村教育留学制度」を利用した。

 同制度で会津若松市から入学した副主将の室井莉空(2年)は「親元を離れ、掃除や洗濯などを自分でするようになって精神的に成長できた」と振り返る。長谷川清之監督(55)は「町外から入ることで地元の子どもが刺激を受ける。双方が高め合っている」と部員数の確保以外にも制度のメリットを指摘する。

 数々の逆境を乗り越え夢の舞台への切符を手に入れた只見ナイン。主将の吉津塁(2年)は「チームのモットーは『全力疾走』。見ている人に元気を与えるような試合をしたい」と意気込む。