論説

【県の当初予算案】人を呼び込み活力を(2月4日)

2022/02/04 09:08

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 県が三日に発表した二〇二二(令和四)年度一般会計当初予算案は、新型コロナウイルス感染拡大への対応策と併せて復興、地方創生を推し進める施策に重点を置いた。県内は東日本大震災と東京電力福島第一原発事故の影響が残り人口減が深刻だ。多くの移住者を呼び込むとともに交流人口を増やし、地域の活力を生み出す必要がある。

 県内の人口は二〇二〇年十月一日現在、約百八十三万人で、ピークとなった一九九八(平成十)年一月の約二百十四万人から下降線をたどっている。このままでは、県内経済の縮小ばかりでなく、地域コミュニティーや社会保障制度、行財政運営の維持が困難になる懸念がある。

 県は子育て環境充実など自然増対策とともに移住・定住対策を展開してきた。二〇二〇年度は七百二十三世帯千百十六人が移住し、県が調査を始めた二〇〇六年度以降で最多となった。テレワーク普及や地方生活への価値観の高まりが後押ししたとみられる。

 民間シンクタンクが実施した居住地以外の都道府県に心を寄せる人の数を示す「関係人口」調査で、本県は全国最多の約千二百二十九万人となった。全国の約二万人の出身地と最も応援したい都道府県を調べ推計した。県内への注目が高まっていることを示すデータだが、「県内を訪れたことはない」と答えた人は四割強に上ったという。

 当初予算案には、交流人口拡大を目指す「ふくしまSDGsツーリズム」が盛り込まれた。被災地の現状を学ぶ旅などのほか、今秋に全線開通する見通しのJR只見線沿線の神社、仏閣などの文化財、登山と山中の温泉などを売り込み、本県を訪れるきっかけを提供する。豊かな自然環境や食をはじめ、新たな体験を通して移住意欲を高める取り組みは大切だ。

 移住を推進するためには魅力的な産業創造も欠かせない。原発事故発生後、県内には新産業集積に向けた施設が設けられたが、浜通り地方に整備される国際教育研究拠点は一部開所を一年余り後に控えた今も詳細が定まっていない。県は国に具体的な研究内容を示すよう迫るとともに関連企業の誘致に一層力を入れなければなるまい。

 新年度は新しい県総合計画の初年度に当たる。内堀雅雄知事は記者会見で「新総合計画スタート予算」と表現し、計画に掲げる二〇三〇年度の有るべき姿を実現する上で重要な予算案との認識を示した。県の再生に向け施策を遂行し、成果を挙げていくことが求められる。(円谷真路)