論説

【衆院1票の格差】住民目線の見直しを(2月10日)

2022/02/10 09:00

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 衆院小選挙区の「一票の格差」是正に向けた「十増十減」の定数見直しが進められている。衆院選挙区画定審議会(区割り審)は、一減の対象となっている本県を含めた全都道府県知事の意見を照会した上で、改定案を岸田文雄首相に勧告する。政府は勧告を受けて国会に改正法案を提出する予定だが、それぞれの地域住民の目線に立った議論を強く求める。

 今回の定数見直しは二〇一六(平成二十八)年に成立した衆院選挙制度関連法に基づいて行われる。議席定数を配分する際、人口比をより正確に反映するとされる「アダムズ方式」が導入される。二〇二〇(令和二)年国勢調査の数値によれば本県など十県が各一減、首都圏四都県と愛知県で合わせて十増の「十増十減」が必要となる。

 投票価値の平等を求めている憲法下で、「一票の格差」の解消は以前から課題となっていた。二〇一七年衆院選で一・九八倍だった最大格差は、昨年十月の衆院選では二・〇八倍まで広がっている。今月から昨年の衆院選における一票の格差を巡る選挙無効訴訟の高裁判決が相次いでいる。高裁によって「違憲状態」「合憲」と判断は分かれているが、いずれも二倍以上の格差を問題視し、定数を改める必要性を指摘している。

 法的にも定数の是正は急務ではあるものの、人口が集中する都市部の議員が増え、地方の議員が減ると厳しい環境にある地方の声が届きにくくなるのではという懸念が付きまとう。

 区割り審の意見照会に対し、本県の内堀雅雄知事は経済圏や生活圏などの一体性を最大限考慮するよう求めた。さらに東日本大震災に加え、東京電力福島第一原発事故の影響で人口が不安定な状態にある特殊事情を十分に考慮する必要があるとしている。

 本県では二〇一七年の衆院選で、3区だった西郷村が4区に編入され、西白河郡が分断される形になった。政府は知事の意見を重く受け止め、単なる数合わせのための市や郡の分割や統合を避けなくてはなるまい。

 本県以外の削減対象の県からは「地方の実情が国政に反映されなくなる恐れがある」「人口の多寡にかかわらず、地方の声を確実に国政に反映させる仕組みが重要だ」などといった訴えも出ている。定数を変えるに当たり、現在の法律のもとではアダムズ方式による見直しは避けられないとしても、国はこの方式を最善とはせずに、選挙制度の在り方をさらに検討するべきではないか。(平田 団)