論説

【震災11年 国際教育研究拠点】本当に実現できるのか(2月18日)

2022/02/18 09:00

  • Facebookで共有
  • Twitterで共有

 政府が浜通り地方に整備する国際教育研究拠点を巡り、内堀雅雄知事は十二日に開かれた福島復興再生協議会で、拠点の運営を担う「福島国際研究教育機構」の具体化に向け、復興庁が司令塔機能を発揮できる仕組みを構築するよう強く求めた。基本構想策定まで二カ月を切る中での異例の「注文」は、いまだ具体像が見えてこない政府の取り組みへのいら立ちにも映る。こんな状態で世界レベルの拠点を実現できるのだろうか。

 政府は国際教育研究拠点の法制化に向け、八日に特殊法人「福島国際研究教育機構」の設立を柱とする福島復興再生特別措置法の改正案を閣議決定した。ただ、機構の主務大臣は首相と文部科学、厚生労働、農林水産、経済産業、環境の各大臣とされ、首相の下で、だれが実務全体を統括するかが定かでない。このままでは「世界に冠たる拠点」の実現はおろか、組織運営も難しいとの危機感を県が抱いたとしても不思議はない。

 国際教育研究拠点の整備に向けた議論は、浜通り地方の復興政策の柱である福島・国際研究産業都市(イノベーション・コースト)構想の現状と課題などを踏まえて進められてきた。復興に携わる産学官の連携が不十分で、思うような効果が得られていないとの認識の下、有識者が指摘したのは全体を統括する主体、核となる研究施設の必要性だった。

 今回、形の上では機構という主体はできることになった。だが、主体内部が省庁ごとにばらばらでは、復興政策全般を見渡し、拠点の取り組みをコントロールするような役割は望めない。内堀知事は復興庁が予算を一括管理することにより内部統制を図るイメージのようだ。今の復興庁の在りようを見ていると、それだけでは心もとない。機構内部を統括し、産学官や地元との連携・調整を図れる外部人材の登用なども考える必要があるのではないか。

 政府は年度内に拠点の基本構想をまとめ、二〇二三(令和五)年春の一部開所、二〇二四年度の本格開所を目指している。いまだに具体的な研究内容や招聘[しょうへい]する研究者も決まっていないのに、施設設置に向けて確保する用地面積を十万平方メートル程度とし、人員体制を数百人規模にすることで調整しているという。まともなやり方とは思えない。

 まずは目指すべき拠点の具体的な姿を明らかにし、実現に向けた機構の体制を整えるべきだ。このままでは施設だけが立派で中身のない、名ばかりの国際教育研究拠点になりかねない。(早川 正也)