東日本大震災と東京電力福島第一原発事故を伝えるさまざまなウェブサイトがインターネット上にある。震災アーカイブサイトと呼ばれ、公的機関やNPO法人、民間企業などが開設している。あの日何が起きたのか、震災を知らない世代が増える中、時を経るに連れてその役割は大きくなる。アーカイブサイトの管理運営が将来にわたってしっかりと継続され、有効に活用されるよう期待したい。
昨年二月の本県沖を震源とする最大震度6強の地震は大きな被害をもたらしたが、飲み水や非常食の確保、住民同士の安否確認、行政の円滑な避難所設営など、被害を少しでも抑え込もうとする県民の的確な行動が目立った。「落ち着いて行動できた」と振り返る人が多い。震災の教訓を生かす防災活動のたまものだろう。災害の伝承は防災や減災、教育、研究に役立ってこそ意味を持つ。
県が双葉町に設けた東日本大震災・原子力災害伝承館をはじめ、県内には震災を伝える施設が数多く整備されている。被災地に残された当時の状況を伝える資料、長期に及んだ避難生活の記録などをじかに見ると、心を揺さぶられる。一方、アーカイブサイトは実際の伝承施設訪問には及ばないものの、どこからでも閲覧できる便利さがある。コロナ禍で遠出を控えなければならない状況が続けば、さらに重要度は増す。
国立国会図書館は震災に関する記録を一元的に調べられるポータルサイト(検索の窓口)「ひなぎく」を運営している。五十五のアーカイブサイトとつながり、四百八十八万件以上のコンテンツを検索できる。動画や音声、写真、文書など貴重な記録が並ぶ。維持管理が難しく、閉鎖されたサイトもあるが、ひなぎくが継承して公開している例もある。県内の市町村や大学、文化団体が運営するサイトとも連携している。学校での防災教育など、折に触れて閲覧することをお勧めする。
福島民報社のホームページでは、震災に関する連載記事や各種データの推移、復興の様子が分かる航空写真など、これまで新聞に掲載してきた内容を公開している。誰でも自由に見ることができる。アーカイブサイトと合わせ、ぜひ活用してほしい。
迫り来る危険は地域によって違う。得た情報を基に地勢や隣近所に住む人の状況などを考慮して防災を考え、さらには発信していかなければならない。体験の有無に関係なく県民みんなで震災の教訓と安全な地域づくりを伝えていきたい。(鈴木 俊哉)