東京電力福島第一原発事故で発生した除染廃棄物の中間貯蔵施設への搬入が、帰還困難区域などを除き、全県で今月末までにほぼ終了する。環境省は県外最終処分の方向性の検討を二〇二五(令和七)年度からとしている。順調に搬入が進んでいる現状を考えれば、前倒しすべきだ。
双葉、大熊の両町にまたがる中間貯蔵施設には、県内五十二市町村から昨年末までに約千二百四十六万立方メートルの除去土壌などが運び込まれた。新年度の輸送予定量は前年比七割減の約八十一万立方メートルにまで減少する。二〇一五(平成二十七)年三月の開始から七年で当初に予定した輸送は節目を迎える。
帰還困難区域の除染やため池の放射性物質対策事業など、新たに対応する面はあるものの、これまでの搬入実績と年月を踏まえれば減容・再生利用の知見はかなり蓄積されているのではないか。
環境省の工程表は二〇二四年度に減容・再生利用の技術開発を一通り完了し、次年度から最終処分方式の具体化、最終処分地の調査検討に入るとしている。同省は除染廃棄物を焼却などでどれだけ減らせるかや再生利用にどれだけの量を振り向けられるかが分からなければ、最終処分の具体的な検討には入れないと繰り返す。候補地を探し、絞り込みをしていく上で、処分方式や規模感を示すのは極めて大切なことだが、工程表にとらわれず、最終処分のイメージだけでも早い段階で全国に示してはどうか。
搬入にかかっている期間を考慮すれば、最終処分地が決定して搬出を終えるにはある程度の年月が必要と想定するのが妥当だろう。中間貯蔵・環境安全事業株式会社(JESCO)法で定められた「搬入開始から三十年以内に県外で最終処分」を実行するには、少なくとも期限の二〇四五年の数年前から最終処分地へ移送しなければならない。
環境省は最終処分地の決定に向けて、国民の理解を深めようと昨年五月から対話集会を開催している。オンラインのほか名古屋では対面式で開かれ、今月十九日には福岡で予定されている。一定の理解促進にはつながっているのだろう。ただ、こうした活動を通して受け入れ先が見つかるとは到底思えない。再生利用についても全国に広がっていかないのが残念だ。
時間はあるようでない。最難関ともいえる県外最終処分の候補地選定を先延ばししているように見える姿勢は、最後は地元に押し付けようとしているのではという不信感しか生まない。(安斎康史)