東日本大震災・原発事故

東電の賠償初確定 原発避難者訴訟で最高裁 国責任、今夏にも判断

2022/03/05 09:55

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 東京電力福島第一原発事故で避難した住民らが国と東電を相手取り、慰謝料などの損害賠償を求めた集団訴訟のうち、福島(生業)、群馬、千葉の3件で、最高裁第二小法廷(菅野博之裁判長)は東電の上告を退ける決定をした。裁判官4人全員一致の結論で、2日付。各訴訟の二審判決のうち、国の指針を上回り原告約3600人に計約13億9000万円の支払いを命じた部分が確定した。全国で約30件行われている避難者らの同種の集団訴訟で、最高裁の判断が出るのは初めて。東電の賠償責任と賠償額も初めて確定した。

 一方、第二小法廷は3件の訴訟について国と住民側双方の意見を聞く「上告審弁論」を4月にそれぞれ開くこととした。各訴訟の二審判決はいずれも東電の責任を認めたが、国の責任を巡る判断は割れていた。最高裁は弁論を踏まえ、今年夏にも出す判決で国の責任に関する統一判断を示す見通しだ。

 3件の訴訟は一審が福島地裁の「生業(なりわい)訴訟」と一審が千葉地裁の「千葉訴訟」、一審が前橋地裁の「群馬訴訟」。各訴訟の二審判決は避難継続による精神的損害に加え、生活基盤の喪失や変化に伴う慰謝料を認め、原子力損害賠償審査会(原賠審)の賠償基準「中間指針」を上回る額の賠償を東電に命じていた。

 生業訴訟の仙台高裁判決と千葉訴訟の東京高裁判決は国の責任を認め、東電とともに賠償を命じた一方、前橋訴訟の東京高裁判決は国の責任を否定した。

 東電は中間指針に基づく賠償額で十分などと主張したが、最高裁は賠償額を巡る二審の判断を是認した。決定理由は示していない。

 各訴訟の上告審での弁論の期日は、千葉訴訟が4月15日、前橋訴訟が同22日、生業訴訟が同25日。国の責任を巡っては、福島第一原発への巨大津波の到来を予見し、規制権限を用いて東電に対策を命じていれば事故を防げたかどうかなどが焦点となるとみられる。