廃炉作業が進められている東京電力福島第一原発敷地の最終的な状態について萩生田光一経済産業相は先月、衆院予算委員会の分科会で「具体的に今の時点で示すのは難しい」との見解を示した。廃炉後の姿は被災地の復旧・復興に大きな影響を及ぼす。目標なく作業が進めば、ずるずると「最終処分場」化する恐れがある。早急に明確にするよう政府に迫らねばなるまい。
萩生田経産相は「難しい」とする理由について、原子炉内部の状況など不明な点が多いことを挙げた。一方で「廃止措置の終了状態は地域の将来像に関わるため、技術的観点に加え、地元の思いを含めて検討する必要がある」との考えを示した。もっともらしい説明だが、額面通りには受け取れない。
なぜなら廃炉作業に伴って出る溶融核燃料や大量の高レベル放射性廃棄物の処分方法や処分先が決まっていないからだ。「敷地は更地にする」などと言えば、「廃棄物の処分先は?」と問われ、答えに窮する。処分先を見つけるのは容易でない。面倒なことはあいまいなままにして先送りする。政府の常套[とう]手段ではないのか。
小欄で以前も取り上げたが、二〇二〇(令和二)年一月、原子力規制委員会の更田[ふけた]豊志委員長は東電の小早川智明社長との意見交換で、廃炉作業と並行して放射性廃棄物の処分に向けた取り組みに着手するよう求めた。理由として廃炉における最も困難な問題は放射性廃棄物の処分であり、解決までには数十年かかるだろうから早く始める必要があると述べた。
これに対し、小早川社長は「処分方法などは国や関係者と相談しながら進めていく必要がある」とし、たまり続ける放射性廃棄物の扱いについては「リサイクルを検討しており、まずは減量化することが大切」との考えを示した。行き場の決まらない中間貯蔵施設の除染廃棄物の扱いをめぐる環境省の言い分と、うり二つだ。このままだと「処分方法が決まらないので当面は敷地内に仮置きする」と被災地に再び負担を強いる結果になりかねない。
政府はまず被災地の意向を最優先して廃炉の最終形をまとめ、実現に向けた責任を負わねばならない。当然、技術開発を含め放射性廃棄物の処分に向けた取り組みを着実に進める必要がある。長期にわたる問題であり、解決までに政権も代わるはずだ。約束が反故[ほご]とならないよう除染廃棄物の県外処分同様、法的な担保も求めるべきだ。先送りは許されない。(早川正也)