論説

【震災11年 東電賠償確定】中間指針の見直し急げ(3月9日)

2022/03/09 09:17

  • Facebookで共有
  • Twitterで共有

 東京電力福島第一原発事故で避難した住民らが国と東電を相手取り、損害賠償を求めた集団訴訟のうち福島(生業[なりわい])、群馬、千葉の三件などについて、最高裁が東電の上告を退け、東電に国の「中間指針」を上回る賠償額を命じた判決が確定した。賠償基準が被害実態に見合っていない現状を司法が認めたと言える。被災者の救済をこれ以上先送りしないためにも、東電は直ちに支払いに応じ、国は早急に指針を見直すべきだ。

 損害賠償は、文部科学省の原子力損害賠償紛争審査会(原賠審)が作った中間指針に基づいている。避難者が損害賠償を求めた集団訴訟は全国で約三十件あり、東電は「指針を上回る損害はない」などと主張してきた。避難に伴う精神的慰謝料や、生活基盤を失う「ふるさと喪失」の損害などで指針を超える賠償を認めた高裁判決を支持した最高裁の判断は、全国の同種訴訟に影響を与えるとみられる。

 中間指針は二〇一三(平成二十五)年十二月の見直しから大きな改定がなく、被災者から「被害実態に即していない」との声が上がっている。指針の賠償で十分に救済されない場合は裁判外紛争解決手続き(ADR)や民事訴訟の道があるが、ADRは東電が和解案を拒否するケースが相次ぎ、訴訟では審理に長い時間がかかり判決確定前に亡くなる原告が出ている。国は最高裁決定を重く受け止め、指針改定を求める被災地の声に真摯[しんし]に向き合うべきだろう。

 国の責任について一、二審では「原発への巨大津波襲来を予見できたか」「津波対策を東電に命じていれば事故は回避できたか」が主な争点となった。三件の訴訟では各高裁の判断が分かれ、福島と千葉の二審判決が国に賠償を命じた一方、群馬の二審判決では国の責任を認めなかった。

 最高裁は四月に弁論を開き、国と住民側双方の言い分を聞いた上で、国の責任について今夏にも統一判断を下す見通しだ。主権者である国民は、自分たちの安全を守ってもらうために国に原発の安全規制を委ねている。上告審では国が原子力事業者に対する規制権限を適切に行使したかどうか、改めて検証されなければならない。

 震災、原発事故から丸十一年となるが、現在も三万三千人余りが県内外で避難生活を送っている。地域や家族のつながりを断たれた上、いまだに賠償問題が決着していない現状に被災者は憤りを感じている。最高裁には、国の責任について被災者救済の立場に立った判決を速やかに出すよう求めたい。(斎藤靖)