
楢葉町の日本原子力研究開発機構(JAEA)楢葉遠隔技術開発センターに勤務する青木勇斗さん(27)は、東日本大震災と東京電力福島第一原発事故発生から十一年を目前に控え「古里復興には原発の廃炉が不可欠」との思いを強くする。東電による廃炉作業に必要な遠隔操作システム開発の実証実験を担う。「地元から廃炉を推し進めたい」と力を込めた。
楢葉町出身。いわき市の福島高専本科一年時に震災と原発事故を経験した。町内の自宅は津波による被害は免れたが、原発事故直後はいわき市や小野町、埼玉県などを転々とした。約二カ月の避難生活を経て、いわき市に両親、兄と生活の拠点を構えた。
高専本科の卒業研究が原発と深く関わるきっかけになった。原発に使用される金属などの性質を学ぶ研究室を選択。専攻科でも同じ研究室に所属し、知識を深めた。
就職活動が本格化していた二〇一六(平成二十八)年四月、楢葉遠隔技術開発センターの運用が始まった。「七年間の学びを生かして、楢葉町や福島県の復興に役立ちたい」。就職先を考えた時、同機構以外の選択肢は思い浮かばなかった。
二〇一七年に同機構に就職し、安全管理業務を中心に担った。センター内に昨年九月、デジタル技術開発のチームが立ち上がった。より直接的に廃炉に関わる仕事がしたいと志願し、メンバーに加わった。現在、原子炉建屋内部の放射線量の測定に関する技術開発に当たっている。今年八月にはセンター内に新たな試験場が設けられる。実験数が増え、より多くのデータを収集できると期待する。
「廃炉には三十~四十年かかるとされ、課題も山積している。今後も楢葉町で技術開発に関わり続け、復興に貢献したい」と決意をにじませた。