東日本大震災・原発事故

【震災・原発事故11年 復興を問う】<復興拠点外>2020年代帰還課題多く 地元「全域除染を」政府「検討」

2022/03/11 10:39

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 東京電力福島第一原発事故に伴う帰還困難区域のうち、特定復興再生拠点区域(復興拠点)から外れた地域は住民帰還の実現に課題が山積する。政府は二〇二〇年代に希望する住民が帰還できるよう避難指示を解除する方針を打ち出したが、帰還意向のない住民の土地や家屋の取り扱い、意向確認の方法、具体的な除染の手法や範囲は示していない。地元町村は全域を除染した上で避難指示を解除するよう求めるが、政府は「地元自治体と協議を重ねつつ検討を進める」との表現にとどめ、明言を避けている。

 復興拠点から外れた「白地(しろじ)地区」について、政府は避難者の帰還意向を個別に把握した上で、国が帰還に必要な場所を除染し、二〇二〇年代に避難指示を解除するとしている。二〇二四(令和六)年度にも対象の全町村で除染を開始する方針だ。二〇二二年度は住民の意向確認などを進める計画で、政府予算に十四億円を計上した。

 富岡、大熊、双葉、浪江、葛尾の五町村でつくる協議会は復興拠点から外れた地域の避難指示解除の方針明示を再三にわたり、国に求めてきた。政府が昨年夏に示した帰還方針を「一定の前進」と捉える一方、除染した上での全域解除を求める姿勢は変わっていない。

 協議会長の吉田数博浪江町長は「従来の面的な避難指示解除とは異なる。住民の帰還意向に沿った解除の在り方がどうなるのか、住民は期待感と不安感の両方を抱えている」と打ち明ける。副会長の吉田淳大熊町長は「全域を除染して解除するのが帰還困難区域の最終的な課題解決の形だ」と強調する。

 双葉町の九つの行政区でつくる「町帰還困難区域関係区長の会」は二日、全域の除染、家屋解体の早期実施を国に求める要望書を町と町議会に提出した。木幡敏郎幹事(羽鳥行政区長)は農村地帯を含む町の環境なども踏まえ、「町中心部だけが復興すればよいわけではない」と訴える。


■避難解除先行き不透明 除染予算など国の明示なし 復興拠点外

 東京電力福島第一原発事故に伴う帰還困難区域のうち、特定復興再生拠点区域(復興拠点)から外れた地域の避難指示解除に向けては、先行きが不透明な部分が多い。国は除染や家屋解体にどの程度の予算が必要になるか現時点で明示していない。拠点内では除染しても空間放射線量が想定よりも下がらず追加除染を余儀なくされるケースも出ている。

 帰還困難区域の面積のうち復興拠点の面積は約8%。拠点内の除染と家屋解体には二〇一七(平成二十九)年度から今年度までに計二千四百六十七億円の国費が投じられた。

 大熊町除染検証委員会は二月、拠点内の線量が避難指示解除の基準となる年間二〇ミリシーベルト(毎時三・八マイクロシーベルト)を超える地点があったとして国に追加除染を求めた。帰還困難区域を抱える町村からは、線量が比較的高い地域に適した除染手法の確立を求める声が上がる。

 大熊、富岡、葛尾の三町村の除染検証委員長、双葉町放射線量等検証委員会副委員長を務める河津賢澄福島大共生システム理工学類客員教授は「国はこれまでの経験を生かしながら、除染と並行して線量を測定するなど、効果的で効率的なやり方に見直すべき」と指摘する。

 拠点外の取り扱いを巡っては、飯舘村が除染をせずに拠点内との一括解除を国に求め、国が特例で新たな仕組みを決定した経緯がある。ただ、新たな村長のもとで村は住民と協議しながら解除の在り方を再検討している。

 南相馬市は帰還困難区域に居住再開を前提とした復興拠点を設けていないが、避難指示の解除は求めている。


■拠点内は今春以降

 帰還困難区域のうち復興拠点では今春以降、避難指示解除が始まる。復興拠点の避難指示解除の見通しなど概要は【表】の通り。