

福島県浪江町が東日本大震災の津波で甚大な被害を受けた請戸地区共同墓地跡に整備した「先人の丘」の完成式が11日、現地で行われた。避難先などから住民が集い、先人をしのぶとともに、震災の記憶を後世に伝えていく誓いを新たにした。
約20人が出席した。大聖寺の青田敦郎住職と南岳院の山口智純住職が供養した。吉田数博町長は「先人を敬う鎮魂の場と被災の記憶を継承する場として、古里を結び付けることを願う」と述べ、佐々木恵寿町議会議長があいさつした。
請戸地区の区長で鈴木酒造店会長の鈴木市夫さんが避難先の山形県長井市から駆けつけた。鈴木さんは「震災から11年で、請戸地区の住民の願いが叶った。町に大変感謝する」と完成を喜んだ。
海岸から約600メートル西にあった請戸共同墓地は、津波で墓石や遺骨が流出した。多くの墓は、町が2015(平成27)年に整備した大平山霊園に移設されたが、一部の墓石は野積みで置かれたままになっていた。
町は先人を敬い、心を寄せる場となるよう敷地7280平方メートルに墓石を埋め、覆土した。丘の高さは約5メートル、直径は40メートル。事業費は約2億円。敷地内には、請戸地区にあった薬師堂の石仏、くさ野神社の碑も設置されている。
先人の丘の近くには大平山霊園、震災遺構「請戸小」、請戸漁港があり、復興祈念公園、復興海浜緑地(多目的広場)の整備が進んでいる。