論説

【鹿島の人材育成事業】復興への先進例に(4月6日)

2022/04/07 09:08

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 南相馬市は事業構想大学院大(本部・東京都港区)と連携し、鹿島区の地域活性化に向けた事業を立案できる人材を五月から育成する。東日本大震災と東京電力福島第一原発事故の被災地では、課題を解決して魅力ある事業を生み出し、復興と地域の創生に貢献する人材が求められている。今回の試みが成果を上げ、他の自治体の先進例になるよう期待する。

 一年間にわたる全二十四回の講座で市場調査や企画立案、収益分析について学び、地域資源の活用策を探る。事業構想大学院大の協力により、各界で活躍する講師がそろう。鹿島区役所の職員をはじめ地元企業や団体などに所属する十人程度が研究員として参加し、常磐自動車道南相馬鹿島サービスエリア(SA)を核にした地域振興策の具現化に取り組む。市は二〇二三(令和五)年度に基本構想を策定した上で、二〇二四年度に本格的に事業に着手する計画だ。

 研究員は一流の指導を地方で受けられる利点を最大限に生かしてもらいたい。一般の研究員も十五日まで募集している。地域が元気になるには民間の力が大切だ。意欲や興味のある人は積極的に手を挙げてほしい。

 南相馬鹿島SAは常磐道の県内区間で唯一のSAで、観光施設「セデッテかしま」を備えている。市によると、年間百二十万人が利用する。相双地方の二車線区間の四車線化が完了すれば、年間二百万人まで増加すると見込まれている。隣接する南相馬鹿島スマートインターチェンジ(IC)の二十四時間利用が二十九日から可能になれば、利便性は一層高まる。

 ただ、震災後の人口減少や商店街の空洞化に歯止めはかかっておらず、SAの集客力が鹿島区の地域振興に十分には結び付いていないのが実情だ。相馬野馬追やサーファーが集まる烏崎海岸、サイクリングロードなど誘客や交流人口の拡大につながる観光資源は少なくない。これらを組み合わせ、馬事文化やサーフィン、自転車に興味を持つ人らに交流サイト(SNS)で情報発信するといった工夫が必要だろう。

 市の担当者は「鹿島区の潜在能力は大いにある。今回のプログラムを通して震災前よりも活気のある地域にしたい」と意気込む。全国の自治体間の競争は激しい。新しい視点で、他にない特色ある事業をいかに打ち出すかが重要だ。創出された事業を成功させるには、市と住民が一体で推進する仕組みづくりが欠かせない。(風間洋)