論説

【会津文化観光拠点】魅力ある展示で誘客を(4月15日)

2022/04/15 09:10

  • Facebookで共有
  • Twitterで共有

 会津若松市の県立博物館を観光の「入り口」とし、来館者に市内や奥会津への周遊を促す「会津文化観光拠点計画」が今年度から本格的に動き出す。新型コロナウイルス感染拡大の長期化で観光客の入り込みが落ち込む中、観光産業の立て直しは喫緊の課題だ。会津の文化にじかに触れたくなるよう博物館の展示を強化し、誘客に結び付けたい。

 計画は「三の丸からプロジェクト」と銘打ち、鶴ケ城三の丸跡にある博物館を拠点に会津の文化を切り口とした観光を推進するのが目的で、文化観光推進法に基づく国の認定を受けた。二〇二〇(令和二)年度から二〇二四年度まで五カ年計画で、国が経費の一部を補助する。博物館と会津若松市、会津若松観光ビューロー、県観光物産交流協会、会津若松商工会議所、只見川電源流域振興協議会で推進会議を組織している。

 具体的には(1)会津侍文化(鶴ケ城、会津藩主松平家墓所=国史跡、御薬園=国名勝)(2)若松城下の商工文化(末廣酒造嘉永蔵、福西本店、竹藤=国登録有形文化財)(3)雪国のくらしとものづくり(三島町の奥会津編み組細工、昭和村のからむし織=国指定伝統工芸品)の三つのエリアを設定。各エリアを紹介する展示スペースを博物館に常設する。館内で学んだ後、実際に足を運んでもらおうという試みだ。

 昨年度までは若松城下の商工文化エリアを巡る仕掛けづくりなどに取り組んできた。今年度は雪国のくらしとものづくりエリアの展示スペースを博物館内に設け、来年度は残る二エリアの展示を始める。博物館が所蔵する雪国の民具や陸奥国会津城絵図、若松城下図屏風[びょうぶ]などを活用する予定だが、映像やCGを駆使した展示など来館者の好奇心や旅心をかき立てる工夫が求められる。

 展示に加えてほしいのが、今秋、全線再開通予定のJR只見線の鉄道施設群だ。会津若松、会津美里、柳津、三島、金山、只見六市町の橋りょうや只見町-新潟県魚沼市間のトンネルなど十七施設が昨年九月、土木学会の選奨土木遺産に認定された。より多くの人に歴史的な価値や魅力を知ってもらえるだろうし、只見線の利用促進と奥会津への誘客にもつながるはずだ。

 県只見線再開準備室は路線の歴史や沿線の魅力、観光情報などを発信するポータルサイトを開設している。年間約三十三万件のアクセスがある。サイトなどと連携した展示の在り方も検討し、相乗効果で全線再開通をもり立てていくべきだ。(紺野正人)