論説

【県人口180万人割れ】個の力高めて活力を(4月23日)

2022/04/23 09:05

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 本県の人口が戦後初めて百八十万人を割り込むことが確実となった。最も多かった一九九八(平成十)年一月の二百十三万八千人余から、二十四年間で三十四万人も減る。人口減は全国の多くの自治体が抱える悩みで、簡単に解決できる問題ではない。出生率向上や転入促進に加え、県民一人一人の持つ力を効果的に発揮できるような行政としての施策展開が求められる。

 福島民報社が独自に集計した四月一日現在の県内推計人口は百七十九万五千三百四十八人だった。一年前に比べ約二万三千人余、一カ月前の三月一日現在に比べ約八千人の減となった。三月は転勤や進学など人の動きが激しい時期に重なる。出生数と死亡数の差の自然動態がマイナス千四百七十九人だったのに対して、転入数と転出数の差の社会動態はマイナス六千二百九十五人に達した。出生率の向上策といった自然動態の対策と移住定住など社会動態の対策の双方を継続して進める必要性が数字から見て取れる。

 東日本大震災と東京電力福島第一原発事故直後の二〇一一(平成二十三)年七月に二百万人を切り、五年四カ月で百九十万人、さらに五年五カ月で百八十万人割れとなる。ほぼ同じペースで十万人ずつ減っている現状だ。放っておけば二〇六〇年には百万人となるとの試算がある。

 人口はそれぞれの自治体の「力」そのものと言える。現在議論されている衆院選の区割りでも、本県小選挙区の議員数や選挙区の線引きを決める基準は人口だ。国から自治体への「仕送り」と言われる地方交付税交付金の算定基準の項目には、多くの人口データが組み込まれている。

 県は結婚や妊娠、出産、子育てを総合的に支援する事業や若い世代の県内定着を促す事業によって、二〇六〇年に百二十八万人とすることを目指している。施策を展開しても、現状から五十万人以上が減る。ならば、人口が減っても本県の活力を保つための施策には力点を置く必要があろう。単純計算だが、県民が百八十万人でも一人当たりの持つ力が一・二倍となれば、過去最多を上回る二百十六万人分の力を持つ。

 一人の「力」が増すためには何が必要か。お年寄りや女性の働き場所を整えるなど、幅広い人材が生産人口を担う環境づくりは不可欠の要素となろう。最先端の産業の集積や情報技術による効率化も後押しとなる。そうした意味では、震災・原発事故からの復興に向かう本県には、県民の個の「力」を高められる可能性がある。(安斎康史)