論説

【二本松の城報館】波及効果を高めよう(5月11日)

2022/05/11 09:05

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 二本松市歴史観光施設「にほんまつ城報館」が開館して一カ月がたち、推計約一万二千人が訪れた。ほぼ想定通りの滑り出しとなっている。二本松城跡に隣接する初の本格的な歴史と観光情報の発信拠点として、さらにいろいろと工夫のしがいがありそうだ。七月の二本松少年隊顕彰祭や十月の提灯[ちょうちん]祭り、菊人形に向け、認知度と波及効果を高めていきたい。

 城報館は市が約十七億円を投じて整備した。一階は「二本松歴史館」で、資料や映像を通して戦国の興亡、藩政時代の町づくりや藩校教育、戊辰戦争など城と城下町の歴史を学べる。二階は「にほんまつ観光情報館」で、四季の魅力をPRするとともに、「現代版二本松少年隊」の演技公開など市民による発信の場としても期待されている。

 開館記念の企画展はNHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」に登場する安達盛長に焦点を当てた。盛長をかたどったとされる木像、居館とされる永田舘をはじめ二本松に伝わる話題を掘り起こし、歴史を身近にした。開館式には盛長役の野添義弘さんが出席し、新たな縁もできた。今後も時宜を得た企画を重ねてほしい。

 一日当たりの来館者が最も多かったのは開館初日の二千三百五十人で、その後の土日祝日は三百人から六百人程度が訪れている。市は年間十万人の目標を掲げ、維持管理費は約四千四百万円を想定している。入館料は無料で常設展のみ一般二百円、特別展は千円以下などと決まっており、経済的・文化的な波及効果をどう生み出すかが課題だ。

 二本松城は近隣に小浜城、宮森城、小手森城といった歴史の舞台が多い。各地域の研究会などの力を借りて城巡りツアーを企画してもいいだろう。県内の他の城との連携も考えてほしい。二本松ゆかりの芥川賞作家中山義秀は、短編小説「信夫の鷹」で畠山氏と伊達氏の戦いを題材に二本松の民の気骨を描いた。歴史小説やドラマも文化的な観光資源として売り込みたい。

 城報館の物販スペースは限られる。菓子、地酒、工芸品など二本松ならではの土産物が買えるようにならないか。出店者の採算面も考慮しながら、訪れる観光客の目線で検討するのが望ましい。

 城報館の近くで先日、はかま姿の剣道部員らしい女子生徒が横断歩道を渡った後、車の運転者に向かって丁寧に一礼していた。若い世代の礼儀正しい姿に、城下町の品格を感じる観光客もいる。そうした若者が育つ環境を、市民が力を合わせてつくっていくことも大切だ。(佐藤克也)