会津若松市内の水路で今、ハンゲショウが緑の葉を伸ばしている。県レッドリストで「絶滅危惧IA類」に分類される。実はここも昨年、消滅の危機にさらされていた▼県内では、もともと旧河東町、喜多方市、いわき市の三カ所しか生息の記録がなかったという。十五年前、会津生物同好会の会員が約十平方メートルにわたって自生しているのを偶然見つけた。ほ場整備の予定地と分かり、市、県、土地改良区に保護を訴え、一部をパワーショベルで土ごと掘り起こして五十メートル先に移植した▼ハンゲショウは水辺や湿地に群生するドクダミ科の多年草で、本州や沖縄に広く分布する。土地造成や河川開発、道路工事で数は減っている。名前は七十二候の一つ、七月の「半夏生」のころに開花するのが由来との説がある。葉の半分が白くなり、「半化粧」の当て字も使われたりする▼消炎、解熱などの薬効があり、古来、先人は助けられてきた。人間はどの植物とも、何かしらの糸で結ばれているのかもしれない。安息の地を狭め、断ち切ってしまうのも人、つなぎ留めようとするのも人である。まるで半化粧の人間界を、瀬戸際にある植物たちはどう見ているだろう。