

東京電力福島第一原発事故による帰還困難区域のうち、福島県葛尾村野行地区の特定復興再生拠点区域(復興拠点)の避難指示は12日午前8時に解除された。帰還困難区域で住民が再び暮らせるようになる初の事例で、県内6町村にある復興拠点で避難指示が解除されるのも初めて。原発事故から11年が過ぎ、拠点内でのまちづくりがさらに進み、復興の加速化が期待される。
避難指示解除時間の午前8時、政府原子力災害現地対策本部の担当者が「バリケード開放」と号令。県道沿いに面した道路をふさぐ蛇腹の金属ゲートが押し開けられた。直後にパトカーや消防車がパトロールに向かった。
篠木弘村長は現地で取材に応じ「一つの区切りだが、これからがスタート。住民に寄り添いながら復興を進め、11年前に少しでも戻れるように取り組むのが責務だ」と述べ、営農再開や住民帰還を進める考えを示した。
野行地区は村北東部に位置し、村唯一の帰還困難区域に指定された。2018(平成30)年に約1600ヘクタールのうち、約95ヘクタールが復興拠点として認定された。拠点内の住民登録者数は現在、30世帯82人。このうち、帰還意向を示しているのは4世帯8人。移住・定住対策に加え、コミュニティー再生や農業の担い手確保などが課題で、解除後も実態に合った国による支援策が求められる。
一方、野行地区では小出谷集落の4世帯11人が復興拠点外となっている。同じく復興拠点から外れ、隣接する浪江町の小伝屋集落と生活圏が一緒の点から町と村は両集落の一体的な除染や家屋解体を政府に求めている。
県内の復興拠点では、双葉町と大熊町が6月以降、富岡、浪江、飯舘の3町村は来春の解除を予定している。