
東日本大震災や東京電力福島第一原発事故、コロナ禍に加え、ロシアのウクライナ侵攻により福島県民を取り巻く環境は激変している。7月10日投開票の参院選候補者や政党に県民の切実な声は届くのか。県民のまなざしを追う。
福島県会津美里町の自営業結城智世さん(44)は、日々の支出額を日記帳に書き込みながらため息をつく。「目に見える形で物価高を感じる。この先どうなるのか」と頭を抱えた。
夫とともに、中学1年から小学3年までの食べ盛りの息子3人を育てており、食料品の価格高騰は家計に直結する。農林水産省の食品価格動向調査によると、今月13日の週のタマネギの価格は過去5年平均と比べ2倍に。ロシアのウクライナ侵攻などに伴い、小麦製品や食用油なども値上がりしている。外食の回数を減らし、野菜は旬の安価なものを買うなどし対応しているが焼け石に水だ。
習い事などにかかる費用も増えており、このままでは子どもの将来のための出費を削らざるを得ないと危機感を募らせている。参院選は物価高が大きな争点にはなっているが、いつまで我慢すればいいか見通しが立たない状況だ。「子育て世帯は家計のうち食費が占める割合が高い。即効性のある支援策を早急に実現してほしい」と各党に求める。
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参院選では各党とも公約として賃上げ誘導や消費税時限減税などの政策を打ち出している。独り暮らしをしながら福島大に通う太田将平さん(20)=3年=にとって、物価高は最も気がかりなことの1つだ。
2020(令和2)年4月の入学以降、飲食店でのアルバイトと家族からの仕送りで生計を立てている。限られた収入の中で生活するため自炊をしているが、品数を1品減らしたり、外出を控えたりして節約している。
来年には就職活動を控え、アルバイトの時間が思うように取れないことも想定される。「(候補者や政党が)最低賃金の引き上げなど生活に直結する政策を示しているかを見ていきたい」と各党の公約を注視する。
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原油高や円安を背景にガソリンの小売価格も高止まりしている。経済産業省資源エネルギー庁の調査によると、レギュラーガソリン1リットル当たりの県内平均小売価格は20日現在、171円50銭。2年前と比べ、40円程度高い水準だ。
二本松市の昭和タクシーが燃料に使う液化石油ガスやガソリンは昨年と比べ、2割程度高くなった。新型コロナウイルス感染拡大が落ち着きを取り戻し客足は戻りつつあるが、燃料高が足かせとなり業績の本格回復に至っていない。国土交通省は価格高騰相当分の補助金で下支えをしており、同社の担当者は助成金の継続に期待をかける。社長の安斎文彦さん(65)は「安定的な経営ができなければ新たな雇用の確保も難しい」として、業界への継続的な支援を求めている。