

参院選福島県選挙区(改選1議席)で事実上の一騎打ちを繰り広げる自民党公認の新人星北斗(58)=公明党推薦=、野党統一候補で無所属の新人小野寺彰子(43)=立憲民主党、国民民主党、社民党推薦=はともに、いわき市・双葉郡では特筆すべき「地の利」がない。星陣営は党内調整で保守分裂選挙を回避したものの、一部にわだかまりが残る。小野寺陣営は昨秋の衆院選での候補者調整によって生じたひずみが解消されていない。それぞれが勢力結集に不安を抱えながらの選挙戦となっている。
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■星陣営 保守分裂回避も不満
28日、星は双葉郡で選挙カーを走らせ、浜通りに新産業を創出する福島国際研究教育機構の早期整備、再生可能エネルギーの導入促進などを訴えて回った。5区選対本部長代行の県議矢吹貢一は「大量得票で復興事業に信任を得たい。いわき市と双葉郡が鍵を握っている」と熱っぽく語った。
浜通りに地縁や血縁がほとんどない候補者を自民が立てたのは約15年ぶりだ。当選8回の衆院議員吉野正芳(73)をはじめ県議、市町村議の後援会が、担当する地域や企業・団体を割り振り、広大なエリアできめ細かく支持固めを進めている。2019(令和元)年参院選で勝利した自民現職がいわき市と双葉郡で獲得した約9万2000票に基づき、今回は9万2000票以上を得票目標に据えた。
目標達成には、本県選挙区から比例代表に回った元法相の元職岩城光英(72)の地盤であるいわき市・双葉郡で選挙区票を星陣営が積み上げる必要がある。街頭演説では星と岩城が並び立つ場面を多くし、自民の一体感を演出している。ただ、本県選挙区で星と岩城が票を食い合う保守分裂選挙を避けるため、比例代表への転出を余儀なくされた岩城の支援者からは党決定への不満の声が漏れる。
身内である星と岩城の両支援者が選挙協力に二の足を踏めば集票が滞る、と自民県連幹部は神経をとがらせる。地元の自民関係者は関係が一時、ぎくしゃくしたことを認めつつ、「適切な距離感を取れば、互いの陣営にとって最良の結果を出せるはずだ」と相乗効果に期待を寄せる。
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■小野寺陣営 野党間連携にひずみ
いわき市役所近くにある小野寺の事務所では28日、翌日にいわき市と双葉郡で行う街頭演説に向け、「あなたのこころを届けたい」と書かれたパンフレットの配布準備に追われていた。5区選対本部長の県議古市三久は「市街地での演説を多くし、有権者に身近に感じてもらう機会を増やす」と意気込む。
小野寺の顔と名前を売り込もうと選挙事務所をいわき市平の中心部に構え、街頭演説を重ねる。立民県連や連合福島などの5者協議会を母体に、野党系の県議や市町村議の後援会が稼働。共産党の側面支援も受けている。2016(平成28)年参院選で野党統一候補として3選した現職増子輝彦(74)がいわき市と双葉郡で獲得した約6万9000票を踏まえ、得票目標は6万票以上とした。
ただ、野党間の足並みの乱れによる出遅れもある。小野寺陣営は5月末、5区総合選対準備会を招集したが、連合福島いわき地区連合会は出席を拒否。昨秋の衆院選で事実上の野党統一候補が共産候補となり、連合傘下の有権者が自主投票を余儀なくされた事態への「(立民側の)みそぎが済んでいない」のが理由で、抗議の意思表示だった。選挙協力を取り付けたのは公示日の約1週間前だった。
沿岸部にある電力系や電機系の労組は長年、増子を支持してきた。労組の支持を受ける県議は、当初は増子を支援せざるを得ず「(小野寺との)股裂き状態だった」という。立民県連幹部は「増子先生が降りたおかげで、票は小野寺にまとまりやすくなった」と本音を吐露する。
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NHK党公認の新人皆川真紀子(52)、政治団体「参政党」公認の新人窪山紗和子(47)、無所属の新人佐藤早苗(62)も県内各地で支持を訴えている。(敬称略)